急性気管支炎の大多数はウイルス性であり,抗菌薬投与は不要である
カタル期を過ぎた後の百日咳は治療をしても,咳の持続期間や重症度に影響を与えないため診断する意義は少ない
肺炎ではなく気管支炎であれば,抗菌薬の適応ではなくマイコプラズマ感染症を診断する必要はない
ぱねえテーマである。
悩ましきぱねえテーマ,である。
このテーマを与えてくださった「咳の神」である亀井先生が悩んでいるのであるからして,ただの「咳の民」である私ごときにそう簡単に答えられるはずがないのである。
そしてなぜだかわからないが,「咳の神」と聞いて昔やったスーパーファミコンのアクトレイザーを思い出している私である。久しぶりにやりたいのである。思ったことをついついなんでも書いてしまうのである。
というわけで,最初に結論を言ってしまうと,「凡人があれこれ悩むのは止めよう」ということなのであり,「悩まんでよし」と言うと身も蓋もないが,一応その理由についてあーだこーだ言いながら解説していきたい。
まず,今回の議題として挙がっているのは「急性~亜急性気管支炎」という病態における百日咳とマイコプラズマ感染症であることを確認しておきたい。「長引く咳」で肺結核や肺炎の除外のために胸部X線を撮影したが,特に異常所見はなく気管支炎という診断がついた症例であることを前提に話を進めたい。なぜなら,肺炎像があればマイコプラズマ感染症の診断は比較的容易であり,百日咳菌による肺炎は比較的稀だからである。したがって,鑑別を要するのは肺炎を伴わない気管支炎の病態なのである。
しかし,この気管支炎の病原微生物として頻度が高いのはinfluenza virus,parainfluenza,coronavirus,rhinoviruses,RS virus,human metapneumovirusなどのウイルスである。当然ながらこれらの病原微生物による気管支炎では抗菌薬は無効であり,不要である。これらウイルス以外にも,細菌による気管支炎も起こりうるが,頻度は気管支炎全体の6%にすぎなかったという報告もあり1),基本的には細菌性気管支炎は稀な存在なのである。そしてこの細菌性気管支炎の中に肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae),百日咳菌(Bordetella pertussis),肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)などが含まれるわけである。これらの鑑別は非常に難しく,「咳の神」,いわゆるgod of cough(GOC)はこの点に苦悩されているのである。なお,GOCという略称ですら「ゴック! ゴック!」とあたかも咳をしてそうで,やはりそこも神たる所以なのである。
というわけで,百日咳およびマイコプラズマ感染症による気管支炎をいかにして診断するのか,あるいは診断したほうがよいのかについて考えたい。