2018年の診療報酬改定により,胸腔鏡下弁形成術が保険適用された
冠動脈バイパス手術での内胸動脈の剝離が容易にできる点が優れている
僧帽弁形成術および心房中隔欠損症閉鎖術では,ポートのみで手術が可能である
da VinciRでの冠動脈バイパス手術,心房中隔欠損症閉鎖術および僧帽弁形成術は,出血・痛みが少なく周術期の回復が早く,早期離床が可能である
2018年4月より心臓手術に対して手術用ロボットを使用する術式が保険収載された。新規の医療機器として患者の負担が減るなどの大きな利点が期待されているが(表1),手術用ロボット(da Vinci® surgical system,以下,da Vinci)は,ボタンを押せば自動的に手術が行われるわけでなく,手術が下手くそな人が使って上手になる機械でもない。カーレース最高峰のF1マシンそのものとも言える。特別にトレーニングされたプロドライバーでないとエンジンをかけることすらできない。
da Vinciは,手術をする人間の手先の作業を遠隔操作型の内視鏡装置として術野に伝えるだけの道具なので,新薬や他の新規医療機器〔たとえばステントグラフトやカテーテル大動脈弁置換術(transcathter aortic valve implantation:TAVI)〕と比較しても,デバイスそのものが患者の利益に直接つながるわけではない。
da Vinciの最大の利点は“内視鏡のポートの穴だけで手術ができる”ということで,それにより患者の痛みや出血の少なさ,整容性が大きな利点としてもたらされる(図1)。したがって,従来の開胸手術や小切開手術にda Vinciを組み合わせて使用しても利点はない。この点を医師側も患者側も十分に理解した上での心臓手術に対する応用が望まれる。