No.4925 (2018年09月15日発行) P.57
村岡香織 (慶應義塾大学リハビリテーション医学専任講師)
登録日: 2018-09-17
最終更新日: 2018-09-11
【術後のリンパ浮腫予防や,複合的治療の中でも運動療法に関する知見が拡大してきた】
リンパ浮腫に対する標準的治療法は,「複合的治療」である。すなわち,乳癌や婦人科癌でのリンパ節切除後であれば周術期からリンパ浮腫発症リスク軽減のための生活指導を行い,早期発見のためのフォローアップ体制を構築し,発症した際は用手的リンパドレナージと弾性着衣や弾性包帯による圧迫療法および圧迫下での運動療法を行う。
近年の話題として挙げられることのひとつとして,浮腫の予防介入がある。乳癌術後1週間程度の時期から肩関節可動域訓練や軽度の上肢運動などを含んだ包括的リハビリテーションを行うことで,リンパ浮腫発症の相対リスクが0.28に減少する1)。また,リスク評価のための3~6カ月ごとの外来フォローに加え,浮腫の徴候があった際には一定期間集中的に複合的治療を行うことで不可逆的な浮腫への移行が防げたと報告されている2)。
圧迫下での運動療法も注目されている。がん患者に対する運動療法は,心肺機能や倦怠感の改善など様々なアウトカムに対し有効であり,浮腫のリスクを上げることなく実施できると報告されてきた。最近ではさらに積極的に,筋ポンプ作用の改善を介した浮腫への直接的な介入として,圧迫下での運動療法の有効性が示唆され3),より高い効果が期待される運動肢位や運動種類・強度について検討がなされている。
【文献】
1) Torres Lacomba M, et al:BMJ. 2010;340:b5396.
2) Yang EJ, et al:Breast Cancer Res Treat. 2016; 160(2):269-76.
3) Fukushima T, et al:Support Care Cancer. 2017; 25(8):2603-10.
【解説】
村岡香織 慶應義塾大学リハビリテーション医学専任講師