【高齢肺炎患者のQOLに配慮した診療】
新ガイドライン(以下,新GL)の特徴は,①それまでの3つの肺炎ガイドライン〔市中肺炎(CAP),医療・介護関連肺炎(NHCAP),院内肺炎(HAP)〕を1つにまとめたこと,②「Minds診療ガイドライン作成の手引き」に準拠したこと,③終末期医療としての肺炎診療に言及したこと,が挙げられる。
この新GLについて,①と③について老年医学的に考えてみたい。新GLでは肺炎をCAPとHAP/NHCAPとの2分類でまとめている。このことは起炎菌の耐性度などを考えれば合目的的な判断と言える。もちろんCAPとHAPの中間的位置にあるNHCAPが,CAPと明瞭に区別はできず,「健康な施設入所の高齢者」の肺炎はCAPに近い場合がある。NHCAPの対象は不均一で多様性があり,それに対応した柔軟な診療が必要になる。わが国の施策もあり,今後は在宅での肺炎診療が普及することが予想される。在宅発症の肺炎はほとんどがNHCAPと考えられているが,よりフレイルであるか介護度が高い状況であるので,今後の肺炎訪問診療に関してはエビデンスの蓄積が急務である。
新GLにおいて,終末期の肺炎診療に関してフローチャートを用いた診療指針を示したことは画期的な試みである。危惧されることは,終末期医療が過度に受け入れられてしまうことである。新GLでは,その点も考慮した注意が示されており,誤解のないように利用されたい。この問題に関して,昨今はアドバンスケアプランニング(ACP)が推奨されており,明確な意思表示が可能な段階から人生の最終段階について,本人・家族と協議することが医師に求められている。
【解説】
冲永壯治 東北大学加齢医学研究所老年医学分野准教授