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救急受診する自殺未遂者に対する診療の現状と今後の展望

No.4929 (2018年10月13日発行) P.59

山下智幸 (日本赤十字社医療センター 救命救急センター・救急科)

三宅康史 (帝京大学医学部救急科教授/帝京大学医学部 附属病院高度救命救急センター長)

登録日: 2018-10-10

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  • わが国の自殺者数は減少傾向にあるものの,年間2万人以上が死亡しています。10歳代後半以降の子どもや妊産婦の死亡原因として自殺は最も多く,問題となっています。救急はセーフティーネットの一部として,自殺未遂者の再企図を防ぐ介入を行うべきと思いますが,適切な診療に関する現状と今後の展望について,帝京大学・三宅康史先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    山下智幸 日本赤十字社医療センター 救命救急センター・救急科


    【回答】

    【限られた時間内での標準的なケアを施すには,より深く学ぶ・知ることが肝要】

    救急受診する自殺未遂者が,最初から「自殺を企図したこと」が明らかで,その過程で外傷や急性中毒など身体的障害を被って搬送されてくれば対処法はかなり定型的ですが,転落外傷やひき逃げなどで路上に倒れていたり,また原因不明の意識障害や低体温症で担ぎ込まれてきた場合には,身元や現病歴,既往歴,頼れる血縁者の有無を含め,ゼロから診療を開始せねばなりません。そして,あとになって自殺企図であることがわかったときの担当スタッフの陰性感情も十分理解できます。

    それでも手をさしのべるに値するのは,自殺者を1人でも減らすことは,結果としてその配偶者や両親,子ども達を自死遺族にせずにすむからです。考えてみて下さい。あなたが帰宅して自分の家族の自殺した姿を最初に見つけたとしたら…。そのインパクト,その後の実生活への影響は計り知れません。自殺企図は最終的な自殺完遂の最も大きなリスクファクターなのです。

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