【質問者】
山下智幸 日本赤十字社医療センター 救命救急センター・救急科
【限られた時間内での標準的なケアを施すには,より深く学ぶ・知ることが肝要】
救急受診する自殺未遂者が,最初から「自殺を企図したこと」が明らかで,その過程で外傷や急性中毒など身体的障害を被って搬送されてくれば対処法はかなり定型的ですが,転落外傷やひき逃げなどで路上に倒れていたり,また原因不明の意識障害や低体温症で担ぎ込まれてきた場合には,身元や現病歴,既往歴,頼れる血縁者の有無を含め,ゼロから診療を開始せねばなりません。そして,あとになって自殺企図であることがわかったときの担当スタッフの陰性感情も十分理解できます。
それでも手をさしのべるに値するのは,自殺者を1人でも減らすことは,結果としてその配偶者や両親,子ども達を自死遺族にせずにすむからです。考えてみて下さい。あなたが帰宅して自分の家族の自殺した姿を最初に見つけたとしたら…。そのインパクト,その後の実生活への影響は計り知れません。自殺企図は最終的な自殺完遂の最も大きなリスクファクターなのです。
残り646文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する