肝機能障害の原因診断に必要な検査については,日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドライン JSLM2012」をご参照頂きたい(http://jslm.info/GL2012/00-1.pdf)。日本肝臓学会のホームページでは「B型肝炎治療ガイドライン」「C型肝炎治療ガイドライン」「NASH・NAFLDの診療ガイド2010」「肝癌診療ガイドライン」「B型C型慢性肝炎・肝硬変治療ガイドライン」「慢性肝炎診療のためのガイド」「薬物性肝障害診断基準」が公開されている(http://www.jsh.or.jp/medical/guidelines/)。
HCVの増殖を直接阻害し高い治療効果が得られる,C型慢性肝炎の新規治療薬DAAs(direct acting antivirals)が登場した。これにより治療の選択肢が広がり,HCV排除に向けて期待できる時代となった。
国内ではまず2014年9月,ジェノタイプ1型のC型慢性肝炎・代償性肝硬変に対するダクラタスビル/アスナプレビル併用療法が承認された。国内第3相試験では,性別・年齢・HCV-RNA量・肝硬変の有無・IL28B遺伝子型などには関係なく,高い治療効果が得られた1)。副作用の少ない新たな治療法として,現在,多くの患者が治療を受けている。
続いて2015年3月,ジェノタイプ2型のC型慢性肝炎・代償性肝硬変に対するソホスブビル/リバビリン併用療法が承認された。国内第3相試験の結果,適応症例全体のSVR12(治療開始12週間後のウイルス持続陰性化率)は97%であった2)。
ジェノタイプ1型のHCVに関しては,ソホスブビル/レジパスビル配合剤による国内第3相試験が行われた。ソホスブビル/レジパスビル群,ソホスブビル/レジパスビル/リバビリン群とも98%以上のSVR12が達成され,NS5A変異ウイルスに対しても99%のSVR12が得られた3)。2015年7月3日付で承認され,8月31日に保険収載された。
最新の日本肝臓学会「C型肝炎治療ガイドライン」(2015年9月版)では,インターフェロン適格例にはプロテアーゼ阻害薬を含む3剤併用療法が推奨されており,インターフェロン不適格例にはダクラタスビル/アスナプレビル併用が第一選択とされている。前者はIL28B SNPsの結果,後者はNS5A変異HCVの有無から評価することが望ましいとされている。
IL28B SNPsは,C型肝炎の自然経過・治療効果に関連する遺伝子多型として同定された4)。ペグインターフェロン/リバビリン併用療法の治療効果は,IL28B SNPsがメジャーホモ接合体の場合は高く,ヘテロ接合体やマイナーホモ接合体では低い。
NS5A領域(Y93/L31部位)に変異があるジェノタイプ1b型HCVでは,ダクラタスビル/アスナプレビル併用療法の治療効果が半減する。治療前から10%以上の症例で,NS5A変異HCVを保有することが報告されており1),著効が得られない場合,多剤耐性獲得ウイルスが出現するリスクが高い。ダクラタスビル/アスナプレビル治療前にはNS5A変異を確認し,変異があればソホスブビル/レジパスビルによる治療を選択する。
HCVは完全排除できる時代となるが,高齢者や肝硬変患者など発癌リスクの高い集団にも治療を行うため,SVR後の肝発癌が問題となる。発癌リスクの高い集団の囲い込みと,画像診断を含めたフォローアップ体制の確立は重要な課題である。
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