(長崎県 N)
【基本調律と上室期外収縮による二段脈のほか,非伝導性上室期外収縮の三段脈,3:2伝導の2度房室ブロックで現れることが多い。P波の形状が区別できないと鑑別診断は困難】
上室性二段脈の機序として,基本調律と上室期外収縮とによる二段脈が第一に考えられますが,実際にはすべてが上室期外収縮の二段脈とは限りません1)2)。
上室性二段脈が出現する機序を表1に示しました。非伝導性上室期外収縮の三段脈は,非伝導性のP波が前のT波に重なるタイミングで出現することが多く,この隠れたP波に気がつかないと,洞房ブロックによる二段脈と誤診する可能性があります。3:2伝導の2度房室ブロックは,非伝導性のP波が明らかですぐ診断できることが多いのですが,PQ間隔が延長しているとP波が前のT波に重なることがあり,注意が必要です。心房頻拍や心房粗動の3:2伝導でも二段脈が出現します。3:2伝導の洞房ブロックはWenckebach型の洞房ブロックでは長いPP間隔は短いPP間隔の2倍より短くなり,Mobitz2型の場合にはちょうど2倍になります。心房粗動では,2:1伝導と3:1あるいは4:1伝導が交互に出現すると上室性二段脈になります。atrial escape-capture bigeminy3)はごく稀な不整脈ですが,異所性リズムに洞リズムが続く二段脈を診た場合は可能性が考えられます。
これらの二段脈で,洞性P波に異所性P波が続くのは上室期外収縮の二段脈のみで,心房頻拍や心房粗動以外では2発目のP波はみな洞性です。上室性不整脈の診断では,P波の有無や形態の見きわめが何より重要で,P波がわからないと正確な診断は困難です。洞性不整脈できれいな二段脈になることは少なく,P波がきれいに認識できていれば,洞結節周辺から出た上室期外収縮や3:2伝導の洞房ブロックが鑑別診断になりますが,P波の形状が区別できなければ,頻度の高い機序から一つひとつ検討する以外ないと思われます。
【文献】
1) Wang K, et al:J Electrocardiol. 2007;40(2): 135-8.
2) 橋場邦武, 訳:心臓. 1974;6(5):747-57.
3) Barthwal SP, et al:J Electrocardiol. 1998;31 (1):57-9.
【回答者】
杉本健一 東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 中央検査部部長