(秋田県 F)
【若年では心因性,中高年では要因不明の排尿筋低活動がしばしばみられる】
ご指摘の通り,女性では男性の前立腺のように直接下部尿路閉塞を起こしうる解剖学的な臓器がないため,排尿障害は少ないと思われがちですが,実際の臨床では排尿障害を訴える女性は稀ではありません。
尿閉の原因に関してですが,一過性の尿閉で,あとは症状がなくなってしまったのであれば器質的疾患は考えにくく,おっしゃる通り,ストレスによる影響は考えられると思います。30歳以下の若年女性に突然に起こる心因性尿閉,尿排出障害をFowler症候群と言います。明らかな神経疾患や原因がなく,外尿道括約筋の過緊張により排尿障害をきたすと考えられています。
膀胱炎が神経因性膀胱の原因となることは考えにくいと思います。ご指摘の通り,尿排出障害があり,そこに感染を合併した可能性が高いと考えます。可能性としては,もともと自覚症状は乏しかったようですが,慢性的に残尿があった可能性を考えます。中高年女性では,明らかな神経疾患やその他の要因がないにもかかわらず排尿筋低活動を認めることがあり,加齢による膀胱壁の平滑筋量の減少などの可能性が言われています。また,女性の排尿障害(排出障害)の原因として,骨盤臓器脱がありますので,脱の症状(下垂感や股に物が挾まる感じなど)がないかを問診でご確認頂くのもよいと思います。
脱の症状があり,診察で骨盤臓器脱があれば,その治療による排尿障害の改善が期待できます。もしそのような器質的疾患がなく,今後も残尿が減少しなければ,尿流動態検査施行による病態の解明(排尿筋低活動なのか,排尿筋括約筋協調不全なのか判断)の上,治療としては間欠的自己導尿指導を選択せざるをえないかと思います。
【回答者】
藤原敦子 京都府立医科大学泌尿器科学教室講師