株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

(1)心房細動(AF)のとらえ方と治療の落とし穴[特集:これからの経口抗凝固薬(DOAC)処方のポイント]

No.4943 (2019年01月19日発行) P.28

奥山裕司 (おくやまクリニック内科・循環器内科院長)

登録日: 2019-01-21

最終更新日: 2019-01-16

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

心房細動(AF)は老化現象を基盤としており,単なる不整脈ではない側面がある

AFでは脳卒中以外の心血管死あるいは非心血管死も多い

早期にカテーテルアブレーションを行っても“根治する(=将来にわたって出ない)”わけではない

AF burdenを減らすことは,脳梗塞予防に有効な可能性はあるが検証が必要である

1. 心房細動(AF)の適切な診断のために

近年,心房細動(atrial fibrillation:AF)は,腎機能悪化やフレイルとの関連が指摘されており,決して単なる電気現象ではなく,老化・動脈硬化の類の全身的な変化の表現であるという側面を持つ1)。本稿では巷にあふれている「AFはカテーテルアブレーション(以下,アブレーション)を早期に行えば治る」「アブレーションしてしまえば治るので,発症しなかった人と同じにできる」かのごとき言説に警鐘を鳴らすとともに,AFをどのような病態と理解すれば,様々な臨床的課題に遭遇した際に,適切に判断していく上で役に立つかという視点で私見を交えて解説したい。

2. AFは心房の老化現象で,ほとんどは全身的な老化を伴う

AFの電気生理学的機序は,約1世紀前から様々な説が唱えられてきたが,それらは電気現象としてのAFの一面をとらえているにすぎない。AFの発症頻度は明らかに年齢依存性を呈している上,多くの研究で心房線維化との関連が示唆されている2)。つまりAFは加齢や高血圧といった基礎疾患に伴って発生する線維化を基盤として,つまり広い意味での“老化”を基盤として発生するのである。ある日突然,“正常な心房”の中に異常興奮する細胞群が現れ,AFを引き起こすというのではない。

しかし,肺静脈や上大静脈といった胸腔内大静脈が,異常興奮の発生場所となることが多いのは事実である。それらの異常興奮によってある程度の線維化・炎症が生じている心原での引き金が引かれ,AFが生じると,種々の実験で示されているように,心房の高頻度興奮のために線維化・炎症が一層進行する。その上,心房の拡大も生じるため,AFの基盤となる解剖学的・電気生理学的異常はさらに助長されることになる。これはかつて実験で示された,“AF begets AF(心房細動が心房細動を生む)”である。“AFは癖になる”といった感覚であろう。しかし注意するべきことは,薬剤やアブレーションによって,一時的に(かつ現実的には“一見”であるが)AFが出ていない状態になったとしても,“AF begets AF”による増加分が抑制されるだけであって,もともと進行していた背景の線維化を起こす“力”などは止まらないということである。「洞調律が続いていればどんどん心房は正常になって,AFとは無縁になる」というわけではない。“洞調律が洞調律を生む(SR begets SR)”は全体像を必ずしも正確に表現できていないのである。

プレミアム会員向けコンテンツです(期間限定で無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top