心房細動患者は高齢者が多く,フレイルを呈する患者も多い
フレイル症例では,抗凝固療法に伴う出血のリスクも高くなるが,それ以上に心原性塞栓症のリスクも高くなるので,フレイルというだけで抗凝固療法を控えるべきではない
DOACは利便性が高く,フレイル症例にも有用である
フレイル症例に抗凝固療法を行う際は,多剤処方を避けて,アドヒアランスを保ち,薬剤有害事象を増加させないようにする工夫が重要である
わが国では,2007年に総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が全体の21%を超え,超高齢社会に突入している。今後も高齢者の割合は増え続けると予測されており,2025年には30%,2060年には40%に達する見込みで,まさにわが国は,未曾有の高齢化社会を迎えようとしている1)。
心房細動(atrial fibrillation:AF)は,加齢とともに有病率が増加することが知られており,高齢化社会に伴いAF患者も増え続けている。2003年時点でのわが国全体の健診データをもとにした報告によると,国内の心房細動の患者数は当時で約80万人であるが,2030年には100万人に達していると推測されている2)。
近年,高齢者においてフレイルという病態が注目されている。フレイルは,健康な状態から明らかな身体機能障害の発症や死に至るまでの中間にある状態と位置づけられ,様々な疾患において,予後との関連が報告されている。
AFは高齢者に多いため,フレイルを合併することが少なくない。フレイルを有するAF患者において一番問題になるのが抗凝固療法である。AF患者において,抗凝固療法は心原性塞栓症の発症を減らすが,出血のリスクを高めるため,フレイル患者では抗凝固療法を施行するかどうか苦慮することがしばしばある。
本稿ではフレイルを有するAF患者での抗凝固療法について考えていきたい。