【ツリウムレーザーの凝固能,切開能,蒸散能を応用した術式】
ツリウムレーザーの波長は2013nmであり,水分子に吸収されやすく,組織への影響は深さ1mm未満と少ない特性を持つ。また,凝固能,切開能および蒸散能を併せ持つレーザーとして,多くの外科的手術領域において期待されている。
ツリウムレーザー前立腺核出術(ThuLEP)は,内腺と外腺の間を剝離,核出する際にツリウムレーザーの特長を用いる術式である。前立腺肥大症に対する他の術式との前向き無作為化比較試験では,本術式の少ない出血量,短い入院期間および性機能への低侵襲性が示されてきた。
筆者らは,2015年11月にわが国で初めて,RevoLixTM(LISA laser products OHG,Germany)を用いたThuLEPを導入した。術後6カ月間以上経過観察可能であった30症例の年齢中央値は75歳,前立腺体積中央値は53mL,核出切除量中央値は30g,レーザー照射時間中央値は17分間,術後カテーテル留置期間中央値は2日間であった。合併症として重篤なものはなく,輸血は必要としなかった。術前,術後3カ月目,6カ月目における排尿機能に関する質問票(国際前立腺症状スコア,過活動膀胱症状スコア)および尿流量測定検査では,術前と比較してすべての項目で有意な改善が認められ,性機能への明らかな影響は認められなかった1)。
ツリウムレーザーは,抗凝固薬内服中の患者に対しても安全に使用可能という報告があり,本術式は,抗凝固薬を中止できない前立腺肥大症に対して実施可能な根治的治療法として期待されている。
【文献】
1) 小路 直:Prostate J. 2018;5(1):83-7.
【解説】
小路 直 東海大学医学部付属八王子病院泌尿器科准教授