(岐阜県 K)
【発見直後の破裂・拡大が多い。フォロー間隔の決定には,拡大しやすさの指標ELAPSSスコアが有用】
未破裂脳動脈瘤が発見されたらあわてずにじっくりと様々な意見を聞いて,治療方針,治療の手段を決めていくべきです。小型の動脈瘤で積極的手術または血管内治療をしない場合でも,定期的な経過観察は非常に重要です。
「脳ドックのガイドライン2014」1)に発見後の経過観察について,下記のように記載されています。近日発刊される改訂版でも本記載は継承される予定です。
・開頭手術や血管内治療などの外科的治療を行わず経過観察する場合は,喫煙・多量の飲酒を避け,高血圧を治療する。経過観察する場合は半年~1年ごとの画像による経過観察を行うことが推奨される。
・脳動脈瘤の破裂率は発見から比較的早期に高いことが示されている。大型や多発瘤は増大することも多く,経過観察する場合には,早期に経過観察を一度行うことが推奨される。
・経過観察にて瘤の増大や変形,症状の変化が明らかとなった場合,治療に関して再度評価を行うことが推奨される。
いまだはっきりと原因が証明されていないのですが,未破裂脳動脈瘤の破裂や拡大は発見された後の初期が多いと報告されています。したがって,無症候でも動脈瘤が発見されたら,比較的早期(3~6カ月以内)に一度画像検査をしておくことが推奨されます。
その後のフォローに関しては動脈瘤の拡大(=破裂)のしやすさによって観察の間隔を決めるのがよいと考えます。
脳動脈瘤拡大のしやすさの指標ELAPSSスコアが明らかにされました(表1)2)。すなわち,くも膜下出血の既往(E),部位(L),年齢(A),人種(P),サイズ(S),形状(S)などのファクターが拡大に関与します。5点以上のスコアを有すると5年で10%以上の拡大率があるので要注意です。5点未満は年1回またはそれ以上空けての間隔,5点以上は年2回などの観察が勧められます。
【文献】
1) 脳ドックの新ガイドライン作成委員会, 編:脳ドックのガイドライン2014. 響文社, 2014.
2) Backes D, et al:Neurology. 2017;88(17):1600-6.
【回答者】
森田明夫 日本医科大学脳神経外科教授