No.4956 (2019年04月20日発行) P.24
大西佳子 (京都市立病院緩和ケア科部長)
細川豊史 (洛和会丸太町病院院長)
登録日: 2019-04-22
最終更新日: 2019-04-17
世界保健機関(WHO)が提唱したがん疼痛治療法を正しく行っても,2~3割の患者は痛みやオピオイド鎮痛薬の副作用で生活の質(QOL)が低下する
オピオイド鎮痛薬の全身投与でも十分な鎮痛を得ることができない難治性がん疼痛や,オピオイド鎮痛薬の副作用により継続投与が困難な場合などに,脊髄鎮痛法は有効な手段である
硬膜外鎮痛法は比較的容易に施行することができるが,長期の疼痛管理には,くも膜下鎮痛法のほうが優位である
脊髄鎮痛法を施行するタイミングを逃さずに専門家につなげることや,病診連携,多職種の包括的なチーム医療を継続することなどが,長期の疼痛ケアを成功させる秘訣である
わが国では約100万人が,がんに罹患しており,がん疼痛はがん患者の約50%以上に存在するとされている1)。
世界保健機関(World Health Organization:WHO)が提唱したがん疼痛の治療法は,7~8割のがん患者に有効とされる2)が,残りの2~3割は,難治性で大量のオピオイド鎮痛薬や複数の鎮痛補助薬が必要となり,それらの副作用により生活の質(quality of life:QOL)が著しく損なわれてしまうことも少なくない。
がん疼痛に対する痛みの評価,治療のフローチャートを図1に示す。硬膜外腔および脊髄くも膜下腔へのオピオイド鎮痛薬投与は神経ブロックの中の脊髄鎮痛法と呼ばれ,オピオイド鎮痛薬の全身投与(経口,静脈,皮下,経肛門)でも十分な鎮痛が得られない難治性がん疼痛や,オピオイド鎮痛薬の副作用により継続投与が困難な場合などに有効な手段である。脊髄や末梢神経への転移・浸潤による神経障害性疼痛,腹壁・皮膚・骨格などへの局所浸潤や転移による体性痛,オピオイド抵抗性の内臓痛などが適応となる。