株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

クッシング潰瘍の実際の頻度とPPI投与の意味は?

No.4962 (2019年06月01日発行) P.49

石倉宏恭 (福岡大学医学部救命救急医学講座教授)

登録日: 2019-06-01

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

脳出血を含む中枢神経病変によるクッシング潰瘍が知られていますが,クッシング潰瘍の実際の頻度はどれくらいなのでしょうか。また,実際の救急や脳神経外科の現場で,脳出血に伴う消化管潰瘍を防ぐための方策〔例えばプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor: PPI)を投与すること〕は取られているのでしょうか。

(兵庫県 K)


【回答】

【報告者により発生頻度は様々であるし,PPI投与・非投与群間の差も見られない】

クッシング潰瘍とは,中枢神経系疾患や頭部外傷あるいは頭部手術後に生じる胃・十二指腸潰瘍を指し,現在ではストレス潰瘍の一種と考えられています。クッシング潰瘍は米国の脳外科医であるH. クッシングによって1932年に初めて報告され,その発生頻度は7.8~76.1%1)~4)と報告者により様々です。

救急や集中治療,脳神経外科の臨床現場では,クッシング潰瘍に限らずストレス潰瘍発生のハイリスクと考えられる患者に対して,PPIの投与を実施することが多いのですが,PPI投与による臨床上の損益(効果と副作用)についてはこれまで明らかにされていませんでした。

ところが,2018年12月のThe New England Journal of Medicine誌に5),欧州で実施されたICU患者を対象としたPPIの大規模な多施設プラセボ対照並行群間盲検ランダム化試験の結果が公表されました。

本試験ではICUに緊急入院し,上部消化管出血の危険があると評価された3282例を対象に,PPI投与群とプラセボ群の90日生存および臨床的重大イベント(臨床的に重要な消化管出血,肺炎,クロストリジウム・ディフィシル感染,または心筋虚血)の発生率が比較されました。その結果,両群間に差がないことが示されました5)。この結果から,クッシング潰瘍に対するPPIの投与は今後の臨床実務に影響を与える可能性があると考えられます。

【文献】

1) Hsu HL, et al:Eur Neurol. 2009;62(4):212-8.

2) Karch SB:J Neurosurg. 1972;37(1):27-9.

3) 山口和彦, 他:脳と神経. 1973;25(12):1567-81.

4) 小野正浩:日医大誌. 1982;49(3):340-52.

5) Krag M, et al:N Engl J Med. 2018;379(23): 2199-208.

【回答者】

石倉宏恭 福岡大学医学部救命救急医学講座教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top