低線量X線薄層CTを用いた肺がん検診は,肺癌だけでなく慢性閉塞性肺疾患(COPD)でみられる気腫性病変および気管支壁肥厚,さらに間質性疾患の検出および禁煙指導に有効である
気腫性病変および気管支壁肥厚の評価は視覚的ではなくソフトウェアで自動的に解析されることが勧められる
COPDのスクリーニングに適した気腫性病変および気管支壁肥厚の程度の決定は今後の問題である
わが国の肺がん検診は,胸部X線間接撮影から低線量X線薄層CT(以下,低線量X線CT)に移行しつつある。
胸部の低線量X線CTによる肺がん検診は,1990年代に世界に先駆けて東京都予防医学協会の「東京から肺がんをなくす会」で始まったことに端を発し,その後わが国をはじめ,他国でも実施されるようになった。最近は,各地の自治体や農協団体,職場で取り入れるところが増えてきている。
低線量X線CTを用いた肺がん検診では,末梢型の数mm程度の陰影から発見が可能であり,肺癌発見率は受診者10万対数百以上と胸部X線検査の10倍以上に及ぶと報告され,米国で行われた大規模臨床試験では,胸部X線写真と比較して死亡率を6.7%減少させたと報告されている1)。
最近,低線量X線CT検診は様々な疾患のバイオマーカーとしても活用されてきている。胸部の疾患では,頻度が高く2050年までの重要な死亡原因とされる肺癌,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),心臓血管疾患がビッグ3として注目されている2)。
本稿では「肺癌CT検診」を活用したCOPD早期発見の試みについて述べる。