日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会など4学会は7日、乳房再建や豊胸手術などに用いられるゲル充塡人工乳房を埋入された患者において、「ブレストインプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)」との診断を受けた初の国内症例が報告されたと発表した。
BIA-ALCLは、ゲル充塡乳房等のインプラント埋入後に稀に生じるT細胞性非ホジキンリンパ腫。大半はインプラントの抜去と完全被膜切除のみで軽快するが、海外では治療の開始が遅れて死亡した症例も報告されている。
厚生労働省は同日、国内で承認されているアラガン・ジャパンの製品について添付文書の改訂を指示した。「警告」欄には、使用前にBIA-ALCLの発症リスクを患者に十分説明し、埋入後は継続的な観察を行うことを追記する。「重要な基本的注意」の項では、インプラント周囲の腫れ(漿液腫)、疼痛、左右非対称、乳房や腋窩のしこり(腫瘤)、発赤、胸の硬化(被膜拘縮)などを認めた場合は速やかに受診させるよう呼び掛ける。
ゲル充塡人工乳房の一部製品は、BIA-ALCLの発症リスクを理由に、5月までにフランスなど複数の国で使用禁止や販売停止の措置が取られている。乳房オンコプラスティックサージャリー学会の緊急調査によると、BIA-ALCLと診断された患者は17年前に乳房再建のために当時国内未承認だったアラガン社製品の埋入を受けていた。患者は7日現在で治療中だという。同学会を含む4学会は今回報告された症例を踏まえ、インプラント埋入後のフォローアップは「10年では足りない」としている。