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■NEWS 米国糖尿病学会(ADA)―高タンパク、低GI食による糖尿病予防は高炭水化物食を上回るか:PREVIEW試験

登録日: 2019-06-10

最終更新日: 2019-06-10

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67日から米国サンフランシスコで開催されている米国糖尿病学会(ADA)において、食事介入による2型糖尿病発症抑制(遅延)作用を検討したランダム化試験 "PREVIEW" が報告された。「高タンパク・低グリセミック・インデックス(GI)」食による2型糖尿病発症抑制/遅延作用を、「高炭水化物・高GI」食と比較したランダム化試験である。結果は、仮説に反して、有意差を認めなかった。しかし結果の解釈には慎重な姿勢が必要なようだ。8日、ノッティンガム大学(英国)のIan MacDonald氏が報告した。

DPP試験など、1990年代後半から2000年代当初に報告されたランダム化試験では、「低カロリー、低脂肪」(結果として高炭水化物)食による、2型糖尿病(DM)発症抑制作用が報告されている。しかし現在では、炭水化物を控えた低グリセミック・インデックス(GI)食の方が、上記の古典的「推奨食」よりも体重減少作用は大きいことが明らかになっている。では、摂取カロリーが同じなら、「高タンパク質(炭水化物控え目)で低GI」食の方が、「タンパク質控えめ(高炭水化物)で高GI」食に比べ、糖尿病抑制(発症遅延)作用は強いのではないだろうか――。PREVIEW試験の背景に存在したのは、そのような疑問である。

対象となったのは、「BMI > 25 kg/m2」のpre-糖尿病(ADA基準)2326例である。平均年齢は52歳、女性が約3分の2を占めた。これら2326例はまず、低カロリー食を2カ月間摂取する導入期間に入った。そして導入期間終了時に「8%超」の減量を認めた1857例が、「高タンパク(摂取エネルギーの25%)、低GI(<50)」群と、「高炭水化物(同55%)と中等度GI(>56)」群にランダム化され、3年間追跡された。なお、「高タンパク質」群のエネルギー摂取に占める炭水化物の割合は45%、「高炭水化物」群に占めるタンパク質の割合は15%だった。

しかし試験は、予想していなかった事態に直面する。脱落者の多さである。開始1年後の時点ですでに約3割、3年間の試験終了時には5割近くが、試験から脱落していた(群間に差なし)。試験開始後2年間は6カ月おきにフォローアップしていたにもかかわらず、である(最終年は接触なし)。糖尿病高リスク例でさえ、食事プログラムを遵守するのはかくも困難かとMacDonald氏は落胆を隠さなかった。

その結果、両群間に、当初想定されていた体重差は生じなかった。そのため、1次評価項目である「2型糖尿病発症」リスクも有意差は認められなかった。

しかしここでMacDonald氏が注意を促したのは、2型糖尿病発症率の低さである。両群合わせて「4%」のみだった。従来のランダム化試験に比べ、極めて低い。事実、これまでの試験から予想された発症率は、高タンパク質食群で10.5%、高炭水化物食群で15.3%という数字だった。

このように発症率が低かったのは、割付群を問わず、減量が維持されたためだと同氏は考えている。本試験に最後まで残った945例中78%では、導入期間前よりも低体重が維持されていた。逆に言うなら、8%前後の減量が維持できれば糖尿病発症リスクを著明に抑制できるということになる。そういう意味では「よいニュースだ」とMacDonald氏は評していた。

本試験はEUを初めて、各国公的機関からの資金提供を受けて行われた。

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