GLP-1アナログは、LEADERに始まり、SUSTAIN-6など複数のランダム化試験で2型糖尿病(DM)例における心血管系(CV)イベント抑制作用が確認されている。しかし「注射剤」であるためどうしても、患者利便性の観点から、経口剤に遅れをとっていた。そのためGLP-1アナログ経口剤の開発が進み、血糖低下作用については、既存薬と遜色のないことが明らかになっている。では注射剤と同じく経口剤のGLP-1アナログも、2型DM例のCVイベント抑制に関し、プラセボに対し、「非劣性」、「優越性」を示すだろうか――。この点を明らかにすべく行われたランダム化試験が、PIONEER6である。6月11日、米国サンフランシスコで開催されていた米国糖尿病学会(ADA)にて、トロント大学(カナダ)のMansoor Husain氏が報告した。
PIONEER6試験の対象は、2型DMを認め、「50歳以上でCV疾患または中等度の慢性腎臓病」を合併、あるいは「60歳以上でCVリスク因子のみ」を有していた3183例である。近時までインクレチン関連薬を用いていた例、重度腎機能低下例などは除外されている。
平均年齢は66歳、女性が3割強を占めた。HbA1c平均値は8.2%、糖尿病罹患期間は平均で15年間だった。また、85%にCV疾患合併を認め、25%強で推算糸球体濾過率(eGFR)が60mL/分1.73m2未満だった。
これら3183例は、経口GLP-1アナログ(セマグルチド14mg/日)群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検下で15.9カ月間(中央値)観察された。
その結果、1次評価項目である「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中」発生率は、経口GLP-1アナログ群:2.9/100例・年、プラセボ群:3.7/100例・年だった。経口GLP-1群におけるハザード比(HR)は0.79(95%信頼区間 [CI]:0.57-1.11)となり、有意差は認められないものの、プラセボ群に対する非劣性は証明された(p<0.001)。
これら1次評価項目を個別に見ると、経口GLP-1アナログ群ではCV死亡が著明に減少した反面(HR:0.49、95%CI:0.27-0.92)、非致死性心筋梗塞のHRは1.18(同:0.73-1.90)、非致死性脳卒中も0.74(同:0.35-1.57)となっていた。この数字は、同様の患者群を対象に同じGLP-1アナログの「注射剤」を用いたSUSTAIN-6で得られたHR、すなわち0.98(CV死亡)、0.74(非致死性心筋梗塞)、0.61(非致死性脳卒中)と大きく異なる。なお、両試験のGLP-1アナログ群におけるHbA1cと体重の低下幅には大きな差は認めない。
さて、経口服用が可能になったGLP-1アナログだが、服用条件は厳しい。起床後空腹時に120mLの水とともに服用し、その後30分間の飲食は禁じられている。会場では、「リアルワールド」における有効性に疑念を示す発言も飛び出した。
本試験は、Novo Nordisk社の資金提供を受けて行われた。また報告と同時に、NEJM誌でオンライン公開された。