集中治療の進歩により,重症者の救命率は著しく向上しているが,生存者の多くは,退院後も長期にわたり身体的,精神的な問題を抱え,社会復帰が困難となっていることが判明し,集中治療後症候群(post-intensive care syndrome:PICS)としてクローズアップされてきている。家族への影響も甚大である(PICS-F)ことも認識され,裾野の広さは計りしれない。少子高齢化が進む中で,救命率が上がるにつれ要介護者を増産する構図は社会的にみても決して健全な状態とは言えず,急性期医療のあり方とその後のフォローが問われている。日本集中治療医学会では,「PICS対策・生活の質改善検討委員会」を立ち上げ,この問題に取り組み始めた。問題を社会全体で共有し,集中治療に直接関わらない医療従事者ならびに行政・地域医療と連携していくシステム作りをめざしている。
本特集は,この委員会で分担執筆を行った。本特集が,広く医療者に,PICSの存在と重要性を理解して頂く一助となれば幸いである。
1 PICSとは─疫学・病態生理・リスクを中心に
井上茂亮,畠山淳司,一二三 亨,西田 修,PICS対策・生活の質改善検討委員会
2 PICSにどう向き合うか─看護ケアと終末期・PICS-Fについて
河合佑亮,宇都宮明美,山川一馬,西田 修,PICS対策・生活の質改善検討委員会
3 PICSの対策と今後の展望
畠山淳司,飯田有輝,井上茂亮,剱持雄二,中村謙介,PICS対策・生活の質改善検討委員会