腎細胞癌(腎盂を除く腎のがん)にかかる割合は,10万人に約6人で,がん全体のうちの約1%を占めるとされる。女性と比べて男性に多い傾向にあり,50歳頃から増加し,70歳代まで高齢になるほど高くなるとされる1)。腎細胞癌死亡数は男性約2.7千人,女性約1.3千人で,男女ともがん死亡全体の1%を占めるとされる。
腎細胞癌発症リスク因子として肥満,高血圧,喫煙などが挙げられるが,遺伝性腫瘍性疾患の解析から遺伝子異常が発症に大きく関わっていることが明らかになってきている〔von Hippel-Lindau(VHL)腫瘍抑制遺伝子やBirt-Hogg-Dube(BHD)腫瘍抑制遺伝子の胚細胞変異〕。腎細胞癌の中で淡明細胞型腎細胞癌は約80%を占め,ついで乳頭状腎細胞癌が約10%,嫌色素性腎細胞癌は5%以下とされる。
一般的に,抗癌剤や放射線治療に対しては抵抗性であるため,腎限局例では外科的切除が行われ,進行転移例では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が用いられる。
超音波やCTの普及以前は,腎癌の3主徴と呼ばれる,①血尿,②腫瘤が触れる,③痛み,といった症状で発見されていた。最近は,検診や他の疾患の検査中に偶発的に見つかることが多く,全体の3/4が直径7cm以下の早期がんとして発見される。
造影CTが診断に有用であり,早期濃染・早期washout・不均一濃染などは悪性腫瘍を示唆する所見である。また,腫瘍内部の造影パターンで組織型の推定も可能である。MRIはCTで診断が確定しない場合やヨードアレルギーがある場合に撮像されることがある。直径4cm以下の腎腫瘍は小径腎腫瘍と呼ばれ,約2割は良性の腫瘍(オンコサイトーマ,血管筋脂肪腫)であることから,確定診断を目的として超音波またはCTガイド下の生検が行われることもある。
局所腎細胞癌に対する標準治療法は外科手術である。局所腎細胞癌に対しては腎全摘除術または腎部分切除術が行われ,10年がん特異生存率が約90%と良好な成績である一方で,その約1/3が経過中に再発・転移する。手術後10年を過ぎても再発がみられることがあるので慎重な経過観察が必要である。
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