低血圧に明確な定義はなく,一般的に収縮期血圧100mmHg未満を目安に診断される。原因疾患の有無から,①本態性低血圧,②症候性(二次性)低血圧に分類され,低血圧の原因となるような病気が特定できない場合に,本態性低血圧と診断される。女性に多く(男女比1:2),成人の3~7%と言われている。
低血圧の症状はめまい,ふらつき,立ちくらみの代表的なものから,倦怠感,易疲労感,眠気,四肢の冷感など,多様である。筋肉量が少なく痩せている,青白い,疲れやすい,冷え性がある,などの体格的な特徴がある。原因疾患を有する症候性(二次性)低血圧症,特に臥位や坐位から立ち上がった際にみられる起立性低血圧症との鑑別が重要である。
治療の原則としては,基礎疾患に起因して起こる症候性(二次性)低血圧症を鑑別することが重要である。症候性(二次性)低血圧症との鑑別においては,胸部X線,心電図,心臓超音波検査,ホルモン測定などが必要であり,病歴や内服薬についても十分に検討する必要がある。また,臥位と立位で血圧を測定し,起立に伴う血圧低下の有無を確認することも重要である。症候性(二次性)低血圧症の場合は,原因となる疾患を治療することが大前提で,また,急性低血圧の場合においては,迅速かつ適切な治療が必要となる。
本態性低血圧における治療の目的は血圧値の改善ではなく,QOLの改善であり,自覚症状がなければ治療の必要はない。めまいなどの自覚症状があれば治療が必要となるが,まずは生活改善の指導,すなわち,食事,仕事,睡眠のリズムを保つこと,適度な水分・塩分を摂取すること,適度な運動を行うこと,を指導する。
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