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がん患者遺族の診療で気をつけたい「余計な一言」の可能性:遺族外来の現場から

No.4974 (2019年08月24日発行) P.55

石田真弓 (埼玉医科大学国際医療センター包括がんセンター精神腫瘍科講師)

大西秀樹 (埼玉医科大学国際医療センター包括がんセンター精神腫瘍科教授)

登録日: 2019-08-27

最終更新日: 2019-08-20

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【がん患者遺族とのコミュニケーションは,関わるすべての人に求められるスキル】

遺族になんと声をかければよいのだろうか。遺族とのコミュニケーションは重要だが,遺族を傷つけることもある。そこで,遺族の経験する「役に立たない(むしろ傷つける)コミュニケーション(UC)」についてアンケートを作成し,全国のホスピス施設/緩和ケア施設で亡くなった遺族を対象に調査を実施した。調査には630人の遺族が回答,60%以上が周囲からUCを受けた経験があり,中でも「死別後の良い側面を強調した」ものがつらかった,と評価された。

また,UCは因子分析によって2つの因子,「回復へのアドバイス」「がんの詮索」に分類され,「がんの詮索」〔「気づかなかったの?」「(病気になるまで)どんな生活だったの?」「どんな経過だったの?」「がん家系なの?」など〕は,「回復へのアドバイス」(「時間が解決してくれる」「長生きして」「元気出して」など)よりも多く経験され,よりつらいと評価された。さらに,配偶者を亡くした遺族は,親を亡くした遺族よりも周囲からの「回復へのアドバイス」をつらく感じていた(OR:5.34,95%CI:1.63~17.57)。遺族に対するUCが周囲の善意によるもので,意図的ではなかったとしても,遺族を傷つける可能性があり十分な注意が必要である。がん患者遺族とのコミュニケーションは医療従事者のみならず,遺族に関わるすべての人に求められる重要なスキルのひとつでもある。

【参考】

▶ Ishida M, et al:J Pain Symptom Manage. 2018;55 (4):1061-7.

【解説】

石田真弓*1,大西秀樹*2  埼玉医科大学国際医療センター包括がんセンター精神腫瘍科*1講師 *2教授

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