【司会】代田浩之(順天堂大学大学院医学研究科循環器内科教授)
【演者】阿古潤哉(北里大学医学部循環器内科教授)
冠動脈疾患に対する血行再建術には,経皮的冠動脈形成術(PCI)と冠動脈バイパス術があり,PCIのほうが低侵襲である
冠動脈ステントの登場により急性冠閉塞の発生率は低下し,PCIの安全性は高まった
抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)により,ステント血栓症の抑制が可能になった。当初,投与期間は延長傾向であったが,近年短縮されつつある
ステント再狭窄の問題を解決するため,薬剤溶出性ステント(DES)が開発された。第二世代に進化を遂げ,再狭窄・血栓症の発生率は低下したが,新たに新生血管新生の問題が指摘されている
PCIの有効性を高めるべく,さらなる研究が求められる
血行再建術はもともとバイパス手術で,狭くなっている血管があればその先の血管につなぎ血流を改善させる方法です。バイパス手術では静脈グラフトを使用していましたが,最近では動脈グラフトを使うことが多くなりました。また別の方法として,今は狭いところにステントを入れる方法が多く行われるようになってきています。血行再建術の方法として,バイパス手術は侵襲が非常に大きいというデメリットがあります。それに対して経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI,昔で言うpercutaneous transluminal coronary angioplasty:PTCA)は,開胸せずに血管からアプローチする方法で,バイパス手術に比べ低侵襲であることが特徴です。
PCIは,1977年にスイスのAndreas Gruentzig先生が世界で初めて,冠動脈の狭窄部を拡張する術式をヒトに対して臨床応用しました。わが国での血管形成術(angioplasty)は,小倉記念病院と,ほとんど同時期に三井記念病院で山口 徹先生が始めたのが最初です。三井記念病院の症例は治療3カ月後も再狭窄がなかったことが報告されています。世界から遅れること5年にして,わが国でもこういったangioplastyが先駆的な先生方を中心として始められました。
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