たこつぼ症候群は身体的,精神的ストレスが誘因と考えられている急性心筋障害である。左室心尖部の壁運動が低下し収縮期の左室形態がたこつぼに似ていることが疾患名の由来である。原因は交感神経活動の過剰亢進,カテコラミンによる心筋傷害,微小循環障害が想定されている。
身体的負荷や精神的負荷を契機に,胸痛や息苦しさ・失神などを自覚する。
類似した検査所見を呈する急性心筋梗塞との鑑別が重要である。
血液検査所見では心筋トロポニンの上昇がみられる。心不全を合併している場合は,B型ナトリウム利尿ペプチドが上昇する。
12誘導心電図では,前胸部誘導および肢誘導の一部にST上昇,陰性T波がみられる。心電図変化は急性心筋梗塞に類似するが,aVRでST低下を認める場合は感度91%,特異度96%で本症を診断可能である。また,QT時間の延長がみられる。
心エコー検査では左室の壁運動異常がみられる。冠動脈の灌流領域に一致せず,左室心尖部の壁運動が低下し,左室基部が過収縮となる。左室流出路狭窄を合併する場合があり,僧帽弁前方運動や左室基部の過収縮が関与する。また,この場合は僧帽弁閉鎖不全の有無の評価が必要である。
急性心筋梗塞との鑑別のため,冠動脈造影が通常必要である。心筋心膜炎・褐色細胞腫・脳卒中の除外を行う。
重症度評価を行い,リスクを層別化する。また,合併症の有無に応じて合併症ごとに治療方針を検討する。また,非心血管系基礎疾患によるたこつぼ症候群の場合は,基礎疾患の治療を並行する。一般的には予後は比較的良好とされるが,重症例や併存疾患による非心臓死による院内死亡率が4.5%という報告がある。
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