血精液症は精液中に血液が混入した状態である。20~60歳代に発症し,40歳代に最も多いとされる。多くは随伴症状を認めず,数週間以内に自然軽快する。原因不明の特発性が多く,悪性疾患は稀である。
精液に混入した出血に驚いた患者が,悪性を心配して受診するケースがほとんどであるため,問診により血精液症と診断されることが多い。血精液症は疾患というより,1つの症状である。
患者の年齢・血精液症以外の随伴症状(排尿時痛・排尿困難・頻尿・会陰部不快感)から原因疾患を念頭において治療方針を組み立てる。血精液症のほとんどは精囊内出血であり,原因不明の特発性が多い。他の原因疾患として,感染や炎症(前立腺炎,尿道炎,性行為感染症),結石(前立腺結石,尿道結石),腫瘍(良性の腺腫様ポリープ・尿道の肉芽組織,悪性の前立腺癌,精巣癌・精巣上体の腫瘍),医原性(前立腺生検,前立腺癌に対する小線源療法,凍結療法,尿道ステント),導管の閉塞や囊胞(射精管囊胞,前立腺囊胞),血管の異常(血管腫,前立腺部尿道の血管の怒張),全身疾患(高血圧症,血友病,紫斑病,von Willebrand病,精囊アミロイドーシス,肝硬変)が挙げられる。
まずは詳細な問診を行い,随伴症状の有無を確認する。理学的所見として,陰囊,精巣,精巣上体,前立腺の診察を行う。検査は感染症の除外が重要であるので,検尿にて尿路感染症の有無をチェックする。
40歳未満の症例で,随伴症状を伴わない場合は経過観察とする。下部尿路症状を伴う場合は,性感染症やほかの尿路性器感染症に起因していることが多く,尿沈渣所見や細菌培養検査,PCR法によるクラミジア検査を行い,感染症の薬物療法を行う。
40歳以上の症例で,感染症・医原性が明らかでない場合は,経直腸的超音波検査(transrectal ultrasonography:TRUS),MRIなどの画像検査を行う。同時に,前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)検査による前立腺癌スクリーニングを行う。
血尿を合併している症例には尿細胞診,腹部超音波検査,膀胱尿道鏡検査,腹部CT検査を考慮し,悪性疾患の除外診断を行う。しかし,原因疾患が明らかになる症例の割合は低く,悪性腫瘍の合併は2%程度であるとされている1)。
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