肺膿瘍とは,肺実質にできた壊死性空洞内に膿が貯留した状態で,胸部X線や胸部CTではニボーを伴う空洞性病変として認められる。肺化膿症とも呼ばれることもある。その原因菌としてはPeptostreptococcusやFusobacterium属,Bacteroides属などの嫌気性菌やそれに準じるStreptococcus anginosus群の関与が最も多く,特に口腔内の常在菌に対する注意が必要となる1)~3)。
このほかに,Klebsiella属や大腸菌などのグラム陰性桿菌,黄色ブドウ球菌,ノカルジア属菌なども原因菌として重要である。
一般に,健常人に発症することは少なく,高齢者,歯周病を有する口腔内の衛生状態が不良な患者,気管支拡張症など肺に基礎疾患を有する患者,悪性腫瘍やアルコール常飲者,免疫低下を有する患者に発症することが多く,男女比は5:1程度とされている1)。
CTガイド下の経皮的穿刺など,検査方法の進歩により,原因菌が同定されることも多くなった。
胸部X線など画像上,空洞を呈することが多く(図1・2),以下のような疾患との鑑別を念頭に置く。
敗血症性肺塞栓:ルミエール症候群,心内膜炎や静脈炎に伴うものも含む。
抗酸菌:結核および非結核性抗酸菌。
真菌:アスペルギルス,クリプトコッカスなど。
寄生虫:ウェステルマン肺吸虫,アメーバ赤痢,エキノコックス。
悪性腫瘍(原発性肺癌および転移性)。
肺梗塞。
血管炎症候群:Wegener肉芽腫など。
その他:肺分画症,サルコイドーシスなど。
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