1 総論:2016から2019へ
2 CQ推奨文において「強く推奨」「弱く推奨」などの画一的な表現が徹底された
3 下部直腸癌の側方郭清について,術前側方リンパ節転移の有無によって異なる強さの推奨が行われた
4 局所再発リスクが高い直腸癌に,術前化学放射線療法を推奨する一方,術前化学療法(放射線照射なし)は,行わないことが推奨された
5 大腸癌の一次治療における薬物療法の選択においては,患者因子,マーカー,腫瘍占拠部位を考慮して決定するプロセスが示された
6 閉塞性大腸癌に対するステント治療が推奨された
「大腸癌治療ガイドライン」は原則として4年に1回の改訂を前提としているが,2016年に薬物療法領域に限った部分的な改訂が行われた1)。したがって,「大腸癌治療ガイドライン2019年版」2)は,2014年以来の全面改訂である。今回の改訂は,日本医療機能評価機構(Minds)が推奨しているThe Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)に,従来よりもさらに強く準拠して行われた。
前回改訂以降の臨床試験としては,外科領域において,側方郭清,腹腔鏡手術に関する臨床試験の結果が公表され,薬物療法領域では,肝転移切除後補助化学療法,直腸癌術後補助化学療法,結腸癌術後補助化学療法,そして,切除不能進行再発大腸癌に関して新しい知見が得られた。高頻度マイクロサテライト不安定性(microsatellite instability-high:MSI-H)固形がんに対して,免疫チェックポイント阻害薬が保険収載され,大腸癌による腸閉塞に対する大腸ステントの保険収載も行われた。また,腹腔鏡下肝切除における術後死亡の問題などが社会問題となり,安全管理の必要性が注目された。
本ガイドラインの改訂は,このような重要な臨床試験結果,新知見,医療に関わる社会的に重要な事案などを考慮して進められた。
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