収縮性心膜炎は,心膜の肥厚,石灰化,心臓との癒着などにより心臓の拡張障害をまねく疾患である。心臓のchamberが拡張しにくいため,血液の流入に伴うchamber内の圧上昇が著明になることから心臓への血液の流入障害が起き,全身のうっ血,あるいは心拍出量低下に至る。急性心膜炎,開心術などに伴う心膜切開,放射線治療などを原因として発生する,あるいは慢性炎症の結果として発生する,などが原因として挙げられるが,明確な原因が判明しないことも少なくない。
労作時息切れ,下腿浮腫などの心不全症状を呈する。中でも,消化管症状や腹水貯留など,右心不全症状が前面に出ることが多く,吸気時に頸静脈怒張が顕著となるKussmaul徴候が認められる場合もあるが,本疾患に特徴的な自他覚症状はない。
診断は容易ではない。CTやMRIで心膜肥厚や石灰化を認めない場合も少なくないので,心エコーや心臓カテーテル検査で,本疾患に基づく特徴的な血行動態異常である胸腔内圧と心内圧の解離(dissociation of intrathoracic-intracardiac pressures)および心室間相互作用の増強(enhanced ventricular interaction)の把握に努める1)。具体的には,左室や右室への血液流入動態の呼吸性変化,肺動脈楔入圧と左室拡張期圧の差の呼吸性変動,右室と左室の拡張期圧の値およびその差,などを評価する。本疾患に認めうるとされている所見がすべてそろうことは少ないので,複数の指標を評価して総合的に判断せざるをえないことが多い。
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