【質問者】
江石義信 東京医科歯科大学人体病理学
【近年,欧米で深刻な問題であるとの認識が持たれ,研究の大きなうねりが起こっている】
気管支拡張症は,慢性の咳と大量の痰に悩まされ,しばしば急性増悪を起こし,徐々に肺機能も悪化していく予後不良の難病ですが,過去の病気とみなされ,新しい治療法の開発もないまま多くの患者が放置されてきました。しかし,今欧米で本症の増加が確認され,原因も不明のものが多く(特発性),深刻な問題であるとの認識が持たれ,その病態,成立機序,治療法について,研究の大きなうねりが起こっています。特に英国を中心にその病態が最新の免疫学的手法で検討され,その形成機序は,下気道に定着する微生物の存在とそれに対する宿主の過剰免疫応答であるとの理論が確立されました。
これはわが国でびまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis:DPB)について行われた研究ともパラレルで,わが国ではDPBにはマクロライドが有効であり,それはマクロライドが宿主の過剰な免疫応答を適度に調節するからであると説明されました。しかし,そのマクロライドも気管支拡張症に対してはあまり有効ではなく,最新の欧州の気管支拡張症治療ガイドラインでも,その適応は限定的とされています。現在,欧州では国際的な共同研究組織が立ち上がり,抗菌薬の新たな可能性が探られる(吸入療法など)一方で,過剰な宿主の免疫応答を抑制する目的で,吸入ステロイド,スタチン,好中球エラスターゼ阻害薬,ケモカイン阻害薬などの開発が進んでいます。
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