職業性過敏性肺炎の診断における最大のポイントは職業性過敏性肺炎を疑うことである。したがって問診が最も重要であり,病歴,特に職業歴を詳細に聴取する必要がある
職業性過敏性肺炎は,他のアレルギー疾患(喘息,皮膚炎など)を併発することがある
職業性過敏性肺炎の治療は抗原回避が不可欠であり,軽症例では抗原回避により自他覚症状は改善するが,線維化が進行すると離職による抗原回避後にも病状が進行することがある
対策がなされた職業性過敏性肺炎の有病率は減少する傾向がある中で,新規の抗原による報告も散見される
28歳からスポーツクラブのフロント係として就業し,31歳頃より労作後に乾性咳嗽を自覚した。前医での胸部X線,CT所見で過敏性肺炎が疑われ,築3年目の木造アパート1階に居住し,加湿器を使用していたことから,住居関連過敏性肺炎と診断された。加湿器を新調し,新築の鉄筋アパート3階に転居した後にも,咳嗽,呼吸困難が持続した。
当院初診時,胸部X線で下肺野左側優位にびまん性粒状,すりガラス影(ground-glass opacity:GGO)を,高分解能CT(high resolution CT:HRCT)では背側優位の胸膜直下にびまん性の小葉中心性の小粒状影,GGO,網状影,牽引性気管支拡張像を認めた。血液検査ではWBC 1万2570/mL,CRP 0.2mg/dL,ESR 24mm/時,LDH 309IU/L,KL-6 1500U/mL,SP-D 531ng/mLの所見を認めた。臨床症状,理学所見,検査所見(血液,画像,呼吸機能)から過敏性肺炎が疑われ,加湿器は処分したが,咳嗽,呼吸困難はその後も増悪した。長期休暇中には呼吸器症状が消失し,勤務に復帰すると増悪する,環境誘発が陽性であることより職場に原因があると考え,職場の環境調査を行い,滞在時間の長い受付より大量のAspergillus(A). nigerが培養され,沈降抗体反応もA. nigerが陽性であることが確認され,職場関連過敏性肺炎と診断した。
ステロイド内服の薬物療法に加え,職場では業者による清掃を実施した。その結果,咳嗽,呼吸困難感が減少し,勤務中の咳嗽,呼吸困難感の増悪が減少した。また臨床症状の改善とともに血清中KL-6も低下した。
問診のポイントは,症状の出現・増悪が職業での曝露に関連しているかについて詳細に問うことである。具体的にはその職種に従事している期間や抗原の曝露歴,曝露状況と症状の発現,職業に従事している時間帯と症状発現の時間帯について確認する。就業中に症状が出現する場合は職業との関連を容易に疑うことが可能であるが,抗原吸入から症状発現までに数時間以上の間隔があり,帰宅後に症状が出現する場合は作業との関連に気づかないことも多く,注意が必要である1)。平日に症状が強く,週末や長期休暇に症状が軽減するなどの臨床経過も診断のポイントとなる。