株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

■NEWS 東京五輪見据え、医師以外による解毒薬投与を容認―化学テロ対策で厚労省

No.4988 (2019年11月30日発行) P.66

登録日: 2019-11-22

最終更新日: 2019-11-22

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

厚生科学審議会健康危機管理部会は1114日、「化学災害・テロ時における医師・看護職員以外の現場対応者による解毒剤自動注射器の使用に関する報告書」を了承した。2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据えた化学テロ対策として、研修を受けた消防隊員など医師以外による解毒薬の自動注射器使用が可能になる。厚生労働省は年内にも関係省庁に通知を発出する予定。

報告書は厚労省の「化学災害・テロ対策に関する検討会」がまとめたもの。化学災害・テロの発災現場である汚染地域や被害者の除染を行う準汚染地域での活動には、日常的な訓練や特殊な防護服の装備が求められ、医師・看護職員が立ち入ることはできない。重症患者を救命するためには早期の解毒薬投与が必要である一方、医師・看護職員以外(非医師等)による医行為は原則、医師法第17条に違反するとして、医療提供の遅れが問題視されていた。

こうしたことから報告書では、非医師等による解毒薬投与について、違法性が阻却される条件を整理。①医師等による速やかな対応を得ることが困難、②被害者の生命が危機に瀕した重篤な状況、③解毒薬が被害者に有効である蓋然性が高い、④定められた手順に従った対応の実施、⑤自動注射器の操作が簡便で誤使用の可能性が低い―の5つを満たす場合、研修を受けた非医師等による汚染地域や準汚染地域での解毒薬投与は適切だとの見解を示した。非汚染地域で医師・看護職員のみでは対応しきれない場合の投与も容認するよう求めた。

非医師等の対象は、化学災害・テロに対応する消防隊員や警察官、自衛官、海上保安官を想定。国内で薬事承認されている解毒薬の自動注射器は存在しないため、米国など海外で承認されているアトロピンやオキシム剤の自動注射器を使用するとしている。

非医師等による自動注射器の使用について報告書では「適切な医療提供につなぐまでの緊急措置」と位置づけ、救命体制確保の重要性を強調。厚労省担当官は、「発災から1時間以内に対応できる状況をつくりたい」との考えを示した。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top