ブルガダ症候群の定義,診断にはタイプ1の心電図診断が重要である
診断基準は,主所見の臨床歴の有無により症候性と無症候性にわけられる
健診においてブルガダ型心電図と判定された場合は,循環器内科受診を勧めるべきである
ブルガダ症候群とは1992年にBrugada兄弟により初めて系統的に報告された疾患であり,明らかな器質的心疾患を認めず,心電図上,V1-V3誘導において特徴的なST上昇波形(coved型およびsaddleback型ST上昇)を示し,しばしば右脚ブロックを呈し,心室細動により突然死をきたす可能性のある疾患とされている1)2)。本疾患は男性に多く(70~80%),東南アジア地区に発症頻度が高く,好発年齢は30~50歳だが,高齢者にも散見される3)~5)。また,本疾患においては,Naチャネル(SCN5A)の遺伝子変異が検出される例も認められ,特に家族性ブルガダ症候群における検出率は高い。わが国の成人では,coved型ST上昇の有所見率は0.1~0.3%と報告されている3)6)。
本疾患は症候性と無症候性にわけられるが,前者における症状は心室細動や心肺停止蘇生の既往,失神,めまい,苦悶様呼吸,動悸,胸部不快感などが挙げられる。これらの症状は日中より夜間に出現しやすく,安静時や就寝中,夕食や飲酒後など迷走神経緊張状態の際に多く認められる。また,発熱時に発症することもある4)~6)。失神は前駆症状の有無や出現様式および心電図記録から反射性失神との鑑別が重要である。
ブルガダ症候群の定義は,明らかな器質的心疾患を認めず,症状の有無にかかわらず,本疾患の心電図診断(後述)を満たす場合である。