【年齢や性別を考慮することの重要性が明らかとなった】
遺伝性不整脈は,主に心筋のイオンチャネルをコードする遺伝子の変異によりイオンチャネルの機能障害をきたし,致死性不整脈を発症し心臓突然死の原因となる疾患である。
先天性QT延長症候群(LQTS)患者1124例(LQT 1 521例,LQT2 487例,LQT3 116例)を対象に,遺伝子型および変異部位,年齢,性別により心イベント発症に差異がみられるかを調査した1),わが国における国内多施設後向き観察研究によれば,LQT1ではイオンが通過するポア領域を含む膜貫通領域の変異が,LQT2とLQT3ではポア領域の変異の心イベント発生率が高かった。遺伝子変異部位と性別との関係では,LQT1男性では変異部位による心イベント発生率に差がなかったが,LQT1女性ではポア領域の変異が他の部位の変異よりも心イベント発生率が高かった。一方で,LQT2とLQT3では,性別に関係なくポア領域の変異の心イベント発生率が他の変異に比べて高かった。しかしLQT2女性では,非ポア領域でも高い心イベント発生率を認め,女性であること自体がリスクであった。
以上より,日本人の先天性LQTSにおいて致死性心イベントリスクを評価する上で,遺伝子診断による遺伝子型や変異部位だけでなく,年齢や性別を考慮することの重要性が明らかとなった。
【文献】
1) Shimizu W, et al:JAMA Cardiol. 2019;4(3):246-54.
【解説】
清水 渉 日本医科大学循環器内科大学院教授