インフルエンザとは,インフルエンザウイルスAまたはBにより引き起こされる急性ウイルス性疾患である。例年,11月頃から徐々に患者が増えはじめ,1月頃に流行がピークに達し,4月過ぎに収束する。インフルエンザは,肺炎や脳症などの合併症を併発し,重症化する可能性もあるため,早期診断および治療が必要となる。1~3日の潜伏期を経て,突然の発熱で発症し,上気道炎症状に加え,全身倦怠感,関節痛などの全身症状を呈することが典型的である。高齢者やワクチン接種者では,症状が乏しいことに注意する(他人への感染力はある)。
鼻腔ぬぐい液を用いた,イムノクロマト法による迅速検査が広く用いられている。有用であるが,陽性率は70~80%程度であり,発症早期(6時間以内)はもっと低くなることが報告されている。流行期には,明らかな接触歴があり,高熱等の症状を認めれば,臨床的にインフルエンザと診断した治療をすることが望ましい。ワクチン接種者でも罹患することや1シーズンに,A型(ソ連型・香港型)とB型に感染する可能性があることも理解しておくべきである。
ノイラミニダーゼ阻害薬が第一選択薬となる。発症後48時間以内の早期投与がより有効であるが,48時間以降でも一定の効果は期待できる。
最初に開発されたノイラミニダーゼ阻害薬はオセルタミビル(タミフル®)であるが,その後吸入薬や注射薬といった剤形が異なるもの,また,1回で治療が完結する単回投与製剤が開発され,選択の幅が広がった。インフルエンザは気道の感染症であることから,ザナミビル(リレンザ®)やラニナミビル(イナビル®)などの吸入薬は良い選択となる。従来の薬剤が1日2回,5日間の計10回の投与が必要であったことに比べ,ラニナミビル(イナビル®)やペラミビル(ラピアクタ®)などの単回投与製剤は,1回で治療が完結する。そのため,コンプライアンスや耐性抑止において優位性が期待される。2018年3月に新しい作用機序(Cap依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬)であるバロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)が発売され,選択薬のひとつになった。
重症例や難治例に対する抗インフルエンザ薬の併用に関しては,明確なエビデンスが示されていないが,症例によっては試みてよいと思われる。
対症療法として解熱鎮痛薬を使用するが,アセトアミノフェンが推奨されており,特に小児では,ジクロフェナクやアスピリンは原則禁忌である。症状に応じて,鎮咳薬や去痰薬を併用することもある。
ほとんどの症例は,抗インフルエンザ薬の単独投与で十分であるが,細菌による二次感染を併発することもある。高齢者,肺に基礎疾患を有する患者,免疫不全者に対しては,必要に応じて抗菌薬を併用する。耐性菌の蔓延を防ぐためには,抗菌薬の頻用は好ましくない。適正使用の観点から,血液検査(白血球数,CRP値),微生物検査,胸部X線写真等で,細菌感染の存在を確認すべきである。ニューキノロン系抗菌薬が有効性や安全性などで他の抗菌薬に優れるため,第一選択になる。
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