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アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)[私の治療]

No.5001 (2020年02月29日発行) P.42

松瀬厚人 (東邦大学医療センター大橋病院呼吸器内科教授)

登録日: 2020-03-03

最終更新日: 2020-02-26

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  • アレルギー性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)は,アトピー素因を有する宿主において,Aspergillus fumigatusに代表される真菌や担子菌を抗原として,Ⅰ型およびⅢ型アレルギーの機序で発症するアレルギー性呼吸器疾患である。最も頻度の高いAspergillus fumigatusが原因の場合はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(allergic bronchopulmonary aspergillosis:ABPA)と称する。

    ▶診断のポイント

    気管支喘息患者が胸部異常陰影を呈した際には常に念頭に置くべき疾患であり,治療の遅れが不可逆な肺の線維化につながるため,早期診断が重要である。

    画像所見として,胸部単純X線における肺門部から末梢に連続する粘液栓による無気肺像(mucoid impaction)や胸部CTで認められる中枢性気管支拡張や高吸収域を有する粘液栓(high attenuated mucus:HAM)が特徴的である。

    患者の状態が許せば,気管支鏡検査により可視範囲内に粘液栓を認めることが多い。

    早期診断に際しては,末梢血好酸球増多とIgE高値を伴う胸部浸潤影では常に本症の可能性を念頭に置き,画像が肺結核に類似することがある,Aspergillus fumigatus以外の真菌や担子菌が原因となる症例がある,気管支喘息の合併は必須ではない,ことなども考慮する。

    わが国のABPMは,高齢発症が多い,血清総IgE値が低い,再発しやすい,担子菌であるスエヒロダケの頻度が高いなど,欧米の症例とは異なる臨床像を呈することも多く,わが国の実情に応じた診断基準が提唱されている1)

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    本症の主体は,感染性疾患ではなくアレルギー性肺疾患であり,全身性ステロイド投与が第一選択である。

    合併する気管支喘息に対しては,吸入ステロイドを中心とした抗炎症治療を継続する。

    ステロイドの減量により再発を繰り返す症例や,合併症のためステロイドの十分な投与ができない症例に対しては,アゾール系抗真菌薬を用いることがある。

    合併する喘息が重症である場合は,抗IgE抗体が有効な場合がある。

    抗真菌薬の使用法については確立されておらず,耐性化を誘導しないためにも,抗真菌薬投与前に原因真菌を明らかにしておくことが望ましい。

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