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非びらん性胃食道逆流症(NERD)[私の治療]

No.5003 (2020年03月14日発行) P.42

永原章仁 (順天堂大学医学部消化器内科教授)

登録日: 2020-03-17

最終更新日: 2020-03-10

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  • 胃酸の食道への逆流により煩わしい症状をきたすが,粘膜傷害〔逆流性食道炎(reflux esophagitis:RE)〕がみられないものと定義されている1)。胸焼けを有する例の7~8割はNERD(non-erosive reflux disease)といわれ,実地臨床ではありふれた疾患である。顕微鏡的粘膜傷害,食道知覚過敏,精神的因子(ストレスに対する過剰応答),食道運動障害(酸のクリアランスの低下)などの因子が複雑に交絡して症状をもたらしていると考えられている。

    ▶診断のポイント

    胸焼けのみならず,胃痛,胃もたれなどの上腹部症状を同時に訴えることが多い。まず,上部消化管内視鏡でRE,好酸球性食道炎,食道癌などの鑑別を行う。同時に食道アカラシアなどの運動障害も念頭に置いて内視鏡を行う。胸焼けが主訴で,内視鏡でこれらの所見がなければNERDと診断して治療を開始する。専門施設では高解像度食道内圧検査(high-resolution manometry:HRM)で食道運動障害の評価を,また,食道インピーダンスpHモニタリング(multichannel intraluminal impedance-pH:MII-pH)で酸逆流,非酸逆流,空気逆流による症状か否かの診断を行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    胃酸逆流に起因する症状なので,酸分泌抑制薬,すなわちプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)が第一選択となる。しかしPPIの治療効果はREの70~80%に対してNERDでは50~60%と低率であり,さらにNERDではPPI通常量と半量とで治療効果にあまり差がない2)。また,効果の立ち上がりも緩徐であり,4週を目処に治療効果を評価する。PPI単剤の治療で十分な症状の改善が図れない場合は,病態が多因子であるゆえ薬剤を組み合わせて治療を行う。PPI無効例には,食道アカラシアなどの運動障害,逆流と無関係に症状を訴える機能性胸焼けが含まれている可能性がある。したがって,様々な治療を試みても症状の改善が得られない例はHRM,MII-pHなどで,食道運動障害や機能性胸焼けとの鑑別診断を行う必要がある。症状で定義される疾患のため,症状が消失すれば服薬の必要はない。

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