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東京オリンピックを前にして化学テロへの備えは?

No.5006 (2020年04月04日発行) P.54

上條吉人 (埼玉医科大学病院救急科教授/救急センター・中毒センターセンター長)

須崎紳一郎 (武蔵野赤十字病院救命救急センター部長)

登録日: 2020-04-03

最終更新日: 2020-03-31

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  • 2021年に東京オリンピックが開催される予定です。日本人ばかりでなく,海外からも多くの観客が訪れる大会期間中に化学テロなどが懸念されますが,日本中毒学会代表理事である武蔵野赤十字病院・須崎紳一郎先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    上條吉人 埼玉医科大学病院救急科教授/救急センター・中毒センターセンター長


    【回答】

    【NBC災害として事前の想定・検討を行い,トキシドロームを理解し,解毒剤を備蓄する】

    オリンピック・パラリンピックは世界最大級のイベントにて各国メディアの関心も高く,ホストとして万全の医療準備が求められます。今大会には日本救急医学会が主唱して各医学会の連携体制「2020東京オリンピック・パラリンピックの救急災害医療体制に係る学術連合体(コンソーシアム)」が結成されました。想定される医療需要では熱中症と感染症が大きな懸念項目ですが,大規模イベント関連医療(mass gathering medicine)として「テロ対策」も焦眉です。2013年にボストンマラソンで爆弾テロが発生し,200人以上の死傷者が出たことは記憶に新しいところです。

    ただしテロリズムに関しては,オリ・パラが「あるから」起きるわけではなく,裏返せばオリ・パラが「なければ(終われば)」起きない保証もありません。そもそも化学災害は工場事故,被災,化学物資搬送中の交通事故など,いつでも発生しえ,テロに限定されるものではありません。

    化学災害は,放射線被曝,生物学的危険とともにNBC(Nuclear Biological Chemical)hazardとして特異の対処がされます。病院前救助活動においては安全の確保と除染が最優先ですが,情報がなく目に見えない対象に対して除染の徹底は困難です。一方,除染に時間を浪費すると被災者の救命機会を失いかねず,的確な判断が求められます。消防士など現場活動者が化学被曝した際には迅速性を優先し,事前研修を経た上で解毒拮抗剤の自己投与が認容されることになりました。

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