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■NEWS 【米国心臓病学会(ACC)】抗癌剤心毒性に対するβ遮断薬による予防効果は認められず:ランダム化試験“CECCY”最終報告

登録日: 2020-04-07

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乳癌治療の進歩に伴い生命予後は改善が続いている。その結果、乳癌患者長期生存者(サバイバー)では今や、心臓血管系疾患による死亡率が乳癌死を超えるに至り、乳癌患者に対する心保護の重要性が高まりつつある。そのような中、乳癌化学療法と同時にβ遮断薬を開始し、心毒性を予防しようという試みがなされた。ランダム化試験“CECCY”である。 2018年の本学会で報告された24週間観察データでは、β遮断薬による左室駆出率(EF)低下抑制(1次評価項目)こそ観察されなかったものの、心筋傷害の抑制、左室拡張能低下の抑制は認められた。そのため、当初からの観察予定期間である2年間の観察後ならば、β遮断薬群におけるEF低下の抑制が期待されていた。そして今回のACCにおいて、その2年間観察結果が、Silvia Moreira Ayub-Ferreira氏(サンパウロ大学、ブラジル)により一般演題として報告された。結果は残念ながら、ネガティブだった。

CECCY試験の対象は、アントラサイクリン系化学療法の適応がある、18歳以上の女性乳癌患者192例である。心疾患既往例や化学療法・放射線療法既往例、β遮断薬やレニン・アンジオテンシン系阻害薬服用例は除外されている。β遮断薬(カルベジロール、目標用量50mg/日)群とプラセボ群にランダム化され、24週間のアントラサイクリン系薬剤を含むレジメンと並行して、これらを服用した。

その結果、化学療法終了72週間後までの(試験開始から2年間)、1次評価項目である「10%以上のEF低下」出現率は、β遮断薬群:10%、プラセボ群:11%で、両群間に差はなかった。また群平均EFも同様で、試験開始から両群とも65%前後で推移し、群間差はなかった。さらに、24週間観察時には、β遮断薬群で有意に抑制されていた左室拡張障害の頻度も、長期観察後は「P=0.052」となっていた。

Ayub-Ferreira氏は、プラセボ群におけるEF低下が予想よりも低かった点を指摘すると同時に、β遮断薬による心保護作用を検討するにはより検出力の高い試験が必要だと述べた。

本試験は企業からの資金提供を受けずに行われた。

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