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■NEWS 【米国心臓病学会(ACC)】肺癌、多発性骨髄腫の生存例では、乳癌に比べ、心血管系疾患リスクが著増

登録日: 2020-04-08

最終更新日: 2020-04-08

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がん治療後長期生存者(がんサバイバー)では心血管系(CV)疾患リスクの増加が知られている。わが国でも2018年には日本腫瘍循環器学会が立ち上がり、がんサバイバーのCV予後に注目が集まっている。ではがん種によって、CVリスクは異なるのだろうか? この点を検討した疫学調査が、新型コロナウイルス大流行を受け、今年はWeb上のみで開催された米国心臓病学会学術集会(バーチャルACC)で発表された。Joshua Mitchell氏(ワシントン大学、米国)がポスターセッションで報告した。

Mitchell氏らが解析対象としたのは、2001年から2019年までに米国民間保険データベースに登録された、60日以内に2回以上「がん」と診断され、その後少なくとも365日間の追跡が可能だった11万例強である。平均年齢は58歳、女性が54%を占めた。

がん種別にCVリスク因子を調べると、乳癌とメラノーマで少ない傾向を認めた。それを反映してか、これらのがん種では、レニン・アンジオテンシン系阻害薬やβ遮断薬、スタチンといった心保護薬の処方率も、低い傾向にあった。逆に腎臓癌と肺癌は、CVリスク因子を持つ例の割合が高かった。またがん種を問わず、最も一般的だったCVリスク因子は「高血圧」だった。

がん診断後1年間以内のCVイベント発生率を見ると、肺癌と多発性骨髄腫では心不全発症率が、他がん種に比べ著明に高かった。発生率はそれぞれ10.0%10.6%で、乳癌(2.6%)の3倍以上である。これらに次いで心不全発症率が高かったのは、白血病(7.3%)、リンパ腫(6.4%)、そして腎臓癌(5.8%)だった。

心不全に次いで多かったCVイベントは、脳梗塞だった。やはり肺癌例での発生率が最も高く(4.0%)、次いで白血病、多発性骨髄腫(いずれも2.3%)だった。心筋梗塞は、最も多かった肺癌例でも3.2%、最も少ない乳癌では0.6%だった。

「治療にあたっては、がん種によるCVイベントリスクの差を考慮し、高リスク例ではCVリスクの低減にも努めるべきだ」とMitchell氏らは結論していた。

本研究はBristol-Myers Squibb社のサポートを受けて行われた。また、同社が資金提供するTeam Latitudeが執筆・編集補助を行った。

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