昨年の本学会で報告されたランダム化試験“CAROLINA”では、心血管系(CV)高リスクの2型糖尿病(DM)において、DPP-4阻害薬リナグリプチンはSU剤グリメピリドに比べ、重度低血糖と体重増加を抑制するも、「CV死、心筋梗塞(無症候性除く)、脳卒中」(1次評価項目)の発生率には有意差を認めなかった(SU剤に対し非劣性)。しかしこの検討で評価されたのは、上記イベント「初発」のみだった。本年のADAでは、初発に限らず再発まで含めた全イベントを対象とした抑制作用を検討した結果が報告された。しかし初発イベントのみの解析と同様、やはり2群間に差は認められなかった。12日、Nikokaus Marx氏(アーヘン大学病院、ドイツ)が報告した。
CAROLINAの対象は世界43ヵ国から登録された、HbA1cが血糖低下薬未使用、またはメトホルミン服用下で「6.5~8.5%」、あるいはSU剤、またはグリニド服用下で「6.5~7.5%」の2型DMで、血管疾患既往、あるいはCVリスクを認めた6033例である。2型DM罹患期間は6.3年(中央値)と、比較的早期の患者が対象だった。これらがDPP-4阻害薬リナグリプチン5mg/日群とグリメピリド1~4mg/日群にランダム化され、二重盲検下で6.3年間(中央値)追跡された。
今回、再発イベントまで含めた結果、「初発のみ」に比べ発生数が最も増えたのは「全入院」(2548→5574、3026増)、次いで「全CVイベント」(1053→1860、807増)だった。一方、「心不全入院・CV死」や「脳卒中」、「心筋梗塞」の増加数はいずれも、20~70程度のみだった。
そこで再発まで含めた「全入院」リスクを比較したが、DPP-4阻害薬群におけるハザード比(HR)は0.93(95%信頼区間:0.85-1.02)で、初発のみで比較した0.94(0.87-1.02)と変わらなかった。「全CVイベント」も同様で、再発まで含んだ場合のHRは1.00(0.85-1.17)で、初発のみの0.96(0.85-1.09)と同等だった。また、再発を含めた1次評価項目もHRは0.97(0.82-1.15)で、やはり有意差とはならなかった。
本試験は、Boehringer Ingelheim社とEli Lilly社から資金提供を受けて行われた。