【施術の難易度低下に一役買ったが,開放手術に比べ断端陽性率が高いなど注意点も】
4cm以下の小径腎細胞癌に対しては,腎部分切除術が第一選択の術式とされている。しかし,腎部分切除術では,腎血管を遮断してから25分以内に腫瘍部分を切除し止血縫合操作を終了させる必要があるため,従来より鏡視下での手術は難易度が高いとされてきた。
わが国では,2016年より手術支援ロボット(ダ・ヴィンチ)を用いた腎部分切除術が保険収載された。ダ・ヴィンチでは鮮明な3D画像の下,3本のアームを術者が自由かつ繊細に操作することができるため,一般的には鏡視下腎部分切除術のハードルが下がったと言えよう。これまでは全摘手術が選択されていたようなサイズの大きい腫瘍や,腎門部腫瘍など高難易度症例に対してまで,様々なロボット手術用のデバイスを駆使し部分切除にチャレンジする傾向にある。
しかし,米国のNational Cancer Databaseを用いた報告では,開放手術と比べロボット支援など低侵襲手術のほうが,腎部分切除における断端陽性率が高いことが示されている1)。また,近年病理学的に,腎門部付近の腎腫瘍は小径であっても,静脈内浸潤や腎洞脂肪浸潤をきたすことが少なからずあることが知られてきており,部分切除を行うことに対する否定的な意見も散見されるようになってきた。
高難易度症例に対して開放手術なのかロボット支援手術なのか,また,部分切除なのか全摘を行うべきなのか,今一度原点に立ち戻るポイントにきていると考えられる。
【文献】
1) Fero K, et al:BJU Int. 2018;121(4):565-74.
【解説】
松本一宏 慶應義塾大学泌尿器科講師