【質問者】
角田圭雄 愛知医科大学肝胆膵内科准教授
【肝病態とともに,NAFLDの主な死因である心血管疾患のリスク低減に配慮した処方を行う】
NAFLDは生活習慣病の肝臓での表現型です。NAFLDは炎症や肝線維化を伴って肝硬変や肝癌に進行することが知られていますが,近年の疫学的研究により,NAFLD患者の死因は心血管疾患(cardiovascular disease:CVD)が最多であることが複数報告されています。特に肝線維化の進行や糖尿病がリスク因子として考えられています。よって,NAFLDの予後を改善するためには,肝病態のみならずCVDのリスク低減に心がけることが重要です。特に肝線維化が進展したNAFLDに糖尿病が合併した場合,CVDと肝病態がともに進展しうるハイリスク状態です。NAFLDに対して確立された(少なくとも保険適用の)薬物療法が存在しない現在,糖尿病に対する薬物療法においてNAFLDの肝病態への効果も勘案するセンスが求められます。
2018年,米国糖尿病学会(American Diabetes Association:ADA)と欧州糖尿病学会(European Association for the Study of Diabetes:EASD)が合同で,2型糖尿病に対する薬物療法のコンセンサスレポートを発表しました(2019年一部改訂)。このレポートによれば,食事運動療法やメトホルミンで目標となる血糖コントロールが得られない場合,動脈硬化性心血管疾患のリスクや既往があればSGLT2阻害薬またはGLP-1アナログが推奨薬として並列で記載され,心不全や慢性腎疾患のリスクや既往があればSGLT2阻害薬が優先され,続いてGLP-1アナログが推奨されています。
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