胞状奇胎とは,胎盤絨毛組織における栄養膜細胞の異常増殖と間質の浮腫を伴う異常妊娠で,組織学的に全胞状奇胎と部分胞状奇胎に分類される。超音波検査の普及により妊娠初期に診断されることが多く,子宮内容除去術により胞状奇胎を娩出させた後は,血中の絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の値を指標にして管理を行う。胞状奇胎絨毛が子宮筋層や筋層の血管に浸潤するものは侵入胞状奇胎という。
胞状奇胎は異常妊娠なので,無月経後に性器出血が認められる。異常に増殖した栄養膜細胞から多量のhCGが分泌されるために,正常妊娠と比較してhCG値は異常高値を示す。
超音波検査では子宮内腔にmultivesicular patternと称される多数の嚢胞像を認める。全胞状奇胎では胎児像は認められない。部分胞状奇胎では子宮内に胎嚢や胎児が観察された後に絨毛の嚢胞化が認められるようになる。
診断は娩出された胞状奇胎の組織学的所見に基づいて行う。全胞状奇胎は肉眼的には大部分の絨毛が水腫状に腫大しており,組織学的には栄養膜細胞の異常増殖と絨毛間質の浮腫が認められ,胎児成分は存在しない。部分胞状奇胎は肉眼的には正常と水腫状に腫大した2種類の絨毛からなり,組織学的には一部の絨毛の栄養膜細胞の軽度の増殖と間質の浮腫が認められる。多くの場合は胎児成分が存在する。
組織学的に診断が困難な場合には,免疫組織化学的検査(p57Kip2,TSSC3)あるいは遺伝子検査により診断する。
胎児と胞状奇胎が認められる妊娠(胎児共存奇胎)には,部分胞状奇胎の場合と,正常胎児と全胞状奇胎との双胎妊娠(complete hydatidiform mole coexistent with a fetus)の場合がある。
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