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全保険医療機関が対象の“新型コロナ慰労金”─「患者と動線が重なる」従業員に最大20万円【まとめてみました】

No.5025 (2020年08月15日発行) P.12

登録日: 2020-08-11

最終更新日: 2020-08-11

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に立ち向かう医療機関等への支援として、医療機関や助産所、訪問看護ステーションなどに勤務する医療従事者や職員に支給する「慰労金」の申請受付が7月20日からスタートした。給付対象は約310万人に上るとされ、給付金額は1人につき5〜20万円。各都道府県が窓口となる。厚生労働省が公表している全国の標準的な申請マニュアルに基づき、申請から給付までの流れなどを整理する。

「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」は、2020年度第2次補正予算に盛り込まれ、2921億円が計上された。感染リスクが高く心身に相当の負担がかかる中、強い使命感を持って業務に従事している医療機関等の医療従事者や従業員に対して、「感謝の気持ち」とともに給付するという趣旨に基づき、医師や看護師だけでなく、患者と接する可能性のある幅広い職種が対象となっていることが特徴だ。

医療機関の種別問わず1人当たり5万円支給

慰労金は3類型あり、最も高い20万円が支給されるのは、「都道府県から役割を設定された医療機関等」のうちCOVID-19患者を受け入れた医療機関等に勤務している場合。都道府県から役割を設定された医療機関等とは、①重点医療機関、②感染症指定医療機関、③その他の都道府県がCOVID-19患者の入院受入れを割り当てた医療機関、④帰国者・接触者外来を設置する医療機関、⑤地域外来・検査センター、⑥宿泊療養・自宅療養を行う場合のCOVID-19患者に対するフォローアップ業務、受入施設─を指す。

「役割を設定された医療機関等」でCOVID-19患者の受け入れがなかった医療機関等の場合は10万円が支給される。

注目すべきは、発熱外来の設置などCOVID-19への具体的な取り組みをしていない場合でも、医療機関等に勤務するリスクや負担などを考慮し、すべての保険医療機関や指定訪問看護事業者の訪問看護ステーション、助産所等が給付対象となっている点。対象期間に患者と接する業務で10日以上勤務した医療従事者や職員には5万円が支給される。

「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業」という名称では給付対象の施設が分かりにくいため、各都道府県の窓口には、給付対象となる医療機関等の範囲についての問い合わせが多いという。

 

診療に直接携わらない配膳や清掃も対象

対象期間に合計で10日以上勤務した「患者と接する医療従事者や職員」には、病棟や外来などの診療部門に加え、受付、会計等窓口対応を行う職員も該当する。このほか、給食配膳や清掃など患者に何らかの応対を行う職員なども、勤務実態等によって該当するケースもある。

一方、テレワークのみによる勤務や、医療を提供する施設とは区分された当該法人の本部等での勤務のみであった場合は該当しないので確認が必要になる。厚労省担当官は対象従事者について「患者と動線が重なるかどうか」との基準を示している。院内給食を例にすると、給食調理は対象外で、給食配膳は対象となるイメージだ。

対象期間とは、各都道府県のCOVID-19患者1例目発生日または受入日(新型コロナウイルスに関連したチャーター便やクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」から患者を受け入れた日を含む)のいずれか早い日(岩手県は緊急事態宣言の対象地域とされた4月16日)から6月30日までの間で、1日の勤務時間は問わず、当直などで日をまたいで勤務した場合は2日とカウントする。

医療機関等をすでに退職している職員の場合でも申請が可能だ。原則勤務していた医療機関等を通じて申請するが、難しい場合は、勤務していた医療機関等の勤務証明など必要な書類を揃えた上で個人申請する形になる。

 

医療機関がまとめて申請、支給

申請から受給までのプロセスは、①3類型の中から自医療機関の慰労金の基本的な金額が20万円、10万円、5万円のいずれに該当するかを確認、②患者に接する医療従事者や職員で、対象期間に10日以上勤務した者を特定した上で、慰労金の代理申請・受領の委任状を集める、③申請書や給付対象者一覧など申請に必要な書類を作成し、原則として各都道府県の国保連の「オンライン請求システム」(毎月の診療報酬請求に使用しているシステム)により提出、④都道府県が申請内容を確認後、慰労金を交付、⑤対象医療従事者・職員に慰労金を給付、⑥慰労金の給付終了後、1カ月以内をメドに都道府県に実績報告─という流れになる。

申請は毎月15日から月末まで

慰労金の申請から給付のプロセスにおける主な留意点は3つ。1つ目は、申請期間が毎月15日から月末までの間に定められている点。窓口となる国保連の作業量を考慮し、診療報酬提出時期との棲み分けがなされた。例えば、東京都の申請期限は、国保連を通じて申請する場合は11月30日まで、個別に申請する場合は2021年3月31日までとなる。

2つ目は、慰労金は医療機関等がまとめて申請し、その口座に振り込まれるが、事業主から従業員への給与や手当としては支給できない点だ。慰労金は非課税所得のため、給与とは別に振り込むなど源泉徴収をしないようにする工夫が求められる。ただし、対象者の口座へ振り込む際の事務手数料は都道府県から支給される場合もあるため、確認が必要になる。

3つ目は、慰労金の給付終了後、1カ月以内をメドに都道府県に対して実績報告(対象者への振込記録、受領簿等が必要)を行う必要がある点。仮に支出実績が交付額に満たなかった場合は、精算しなければならない。

医療機関の経営状況は押し並べて苦しく、賞与の不支給や減額などが数多く報道されている。申請には書類の準備など一定の手間はかかるが、全保険医療機関が対象となっている交付金のため、各都道府県に確認の上、申請の手続きを進めてほしい。

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