【体液が腸管膜動静脈にシフトすることで起こる食後低血圧が誘因の可能性】
疫学研究において,高齢者における昼寝は,年齢,うつ傾向,肥満,喫煙,脳卒中の既往,糖尿病,認知症,パーキンソン病と関連していることが報告されています1)。これらの患者では,夜間の睡眠の質が低下しており,昼間まで眠気が遷延することが明らかになっています2)。
また,これらの病態によって自律神経機能低下が認められる場合があり,昼食後に体液が腸管膜動静脈にシフトすることで,食後低血圧を起こしていることが誘因となっている可能性もあります。起立性低血圧や食後低血圧は高齢者の5~30%程度にも認められるとの報告があります3)。
食後低血圧に対する対応は,まずは水分を摂取し脱水を避け,血圧低下の誘因となる薬剤の調整を行います。炭水化物は急激に血糖を上昇させ,食後血圧が低下しやすいため,少しずつ時間をかけながらわけて食べるように注意します。食後2時間は横になるといった対象療法でコントロールされる症例も多いのですが,中には食事中の頻回の意識レベルの低下で薬物療法が必要になる症例も認められます。
【文献】
1) Leng Y, et al:J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018; 73(3):374-9.
2) Cross N, et al:J Sleep Res. 2015;24(5):494-502.
3) Low PA:Clin Auton Res. 2008;18(Suppl 1):8-13.
【回答者】
石川讓治 東京都健康長寿医療センター循環器内科 専門部長