尿道下裂は,外尿道口が亀頭部先端に開口せず,腹側の陰茎,陰囊・会陰部正中に開口している状態である。多くの場合,陰茎は屈曲し背面包皮の余剰を認め,立位排尿困難,性交困難などの問題を生じうる。原則,手術による陰茎・尿道形成術を行う。海外の報告では男児300出生に1人の発生率と,比較的頻度の高い尿路疾患である。
原因はホルモン異常,母親が妊娠中に受けたホルモンのバランス異常などが考えられているが,いまだ明らかではない。
外尿道口が亀頭部先端にないことがポイントとなる。尿道下裂は,軽度から重度まで広いスペクトラムを有するが,外尿道口の陰茎腹側,陰囊側への位置異常,包皮の分布異常(背面包皮の余剰と腹側包皮の短縮),陰茎腹側の索組織と尿道海綿体の形成不全による陰茎の陰囊側への屈曲を特徴とし,外陰部視診にて診断を行う。
まずは陰茎を丁寧に観察し,外尿道口の位置,包皮,尿道板,索の状態をよく観察する(可能なら写真撮影を行い見直してみる)。外尿道口の開口部が(陰囊側から見て)近位部なのか遠位部なのかを確認し,陰茎・亀頭の発育,患児の背景等を考慮し手術時期と術式を決定する。亀頭部・冠状溝部の尿道下裂の場合,meatoplasty and glanuloplasty incorporated(MAGPI)法,Mathieu法などで対応し,尿道板が温存可能で,包皮のdeglovingで陰茎屈曲が是正される中等度から遠位尿道下裂であれば,tubularized incised plate(TIP)法,dorsal inlay graft(DIG)法を選択している。
高度,近位部尿道下裂であれば,索切除と尿道形成を同時に行う一期的手術とするのか,索切除を先行して行い6カ月程度経過してから尿道形成を行う二期的手術で行うのかを検討する。一期的手術であれば,free graft法,Duckett法,transverse preputial onlay island flap法,小柳法などから検討するが,我々の施設ではDuckett法あるいは二期的手術でのTIP法を中心に行っている。
尿道形成術は,いまだ小児泌尿器科診療の中でも最も技術と経験を要する手術である。その治療成績は術者の技量に起因するところが大きく,経験がほとんどない術者が手術書を見ながら行う手術では決してない。再手術を経るほどに難易度は上がっていくので,エキスパートの指導の下,手術経験を積むことを勧める。また,手術スキルだけではなく周術期管理と合併症への対応をエキスパートから学ぶことも,術者になるための不可欠な条件と思われる。術後の丁寧な創部観察から得られる知識は,尿道下裂手術の術者になる上で大きな財産となる。
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