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Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群[私の治療]

No.5028 (2020年09月05日発行) P.41

沖重 薫 (横浜みなと心臓クリニック院長)

橘 伸一 (横浜市立みなと赤十字病院循環器内科)

登録日: 2020-09-07

最終更新日: 2020-09-01

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  • 心房心室間の伝導路に,房室結節以外のKent束による心房心室短絡路(副伝導路)を有する疾患である。早期興奮症候群のひとつであり,発作性上室性頻拍や発作性心房細動を合併しやすい。

    ▶診断のポイント

    通常,頻拍発作時以外には自覚症状はなく,心電図所見により下記に分類される。

    顕性WPW症候群:12誘導心電図におけるデルタ波の存在,PQ間隔の短縮(<120ms),QRS間隔の延長(>120ms)。

    潜在性(不顕性)WPW症候群:Kent束の順行伝導がなく,心電図上でデルタ波を認めない。WPW症候群の診断はなされないが,Kent束を介して心室→心房と逆行性伝導能があるため,房室回帰性の発作性頻拍症の原因となる。

    発作性上室性頻拍発作時には,12誘導心電図にてQRS幅が比較的狭く,規則正しい頻脈を示す。発作性心房細動出現時には,デルタ波を有するQRS幅が幅広く不規則な頻脈(偽性心室頻拍)となる場合があり,時に心室頻拍と誤診される場合がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    WPW症候群に対するカテーテルアブレーションはきわめて治療成功率が高く,根治的治療となりうる。薬物療法の場合は,患者が若年であれば長期内服の必要性や副作用のリスクがあるのに対して,カテーテルアブレーションに関連した重篤な合併症の発生頻度は低いことから,本疾患の第一選択治療と考えられる。発作性上室性頻拍の既往がある場合や,めまいや失神などの重篤な症状を伴う発作性心房細動の既往がある場合には,カテーテルアブレーションを積極的に検討すべきである。また,無症状であっても発作により人命に関わる重大な事故を引き起こす職業(バスなどの公的交通機関の運転手やエアラインパイロットなど)や,頻繁に運動を行うスポーツ選手の場合には,カテーテルアブレーションを第一治療法として考慮する。無症状かつWPW症候群の心電図所見のみである場合は,通常は経過観察が望ましい。

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