【わが国での適応は,薬物療法抵抗性の心原性ショック等による急性心不全】
従来から心原性ショックに対する循環補助装置として,大動脈バルーンパンピング(IABP)が使用されてきた。しかし,2012年に急性心筋梗塞による心原性ショック患者へのIABP補助が,30日死亡率を減少させず1年予後も改善しないという大規模無作為化試験の結果が報告され,心原性ショックに対するIABPのルーチン使用はclass Ⅲとなった。IABPの適応見直しが図られる中,17年9月に新しい循環補助用ポンプカテーテル「インペラⓇ」が登場した。
インペラⓇは,ピッグテールカテーテル形状をした心腔内に留置するポンプカテーテルと制御装置から構成され,カテーテル内に植え込まれた超小型軸流ポンプにより左室内に位置する吸入部から血液を吸い上げ,上行大動脈に位置する吐出部から非拍動・順行性に血液を駆出し,体循環を補助する。経皮的大腿動脈アプローチが可能なインペラ2.5Ⓡ,インペラCPⓇ,外科的に大腿動脈あるいは腋窩動脈アプローチが可能なインペラ5.0Ⓡがある。わが国での適応は「薬物療法抵抗性の心原性ショック等による急性心不全」である。
インペラⓇは循環補助効果とともに,左室拡張末期圧減少による壁ストレス減少および冠血流増加,心筋酸素消費量減少による左室負荷軽減の効果を有する。最近ではこの左室負荷軽減の効果が注目され,ショックを呈する急性心筋梗塞では再灌流療法前に,インペラⓇによる左室負荷軽減を行う「primary unloading」の概念が提唱されている。
【解説】
山本 剛 日本医科大学循環器内科・心臓血管集中治療科 准教授