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皮膚疾患における遺伝子治療の実情について

No.5034 (2020年10月17日発行) P.55

藤本 篤 (新潟大学医歯学総合病院皮膚科講師)

新熊 悟  (奈良県立医科大学皮膚科学教室准教授)

登録日: 2020-10-19

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  • 皮膚疾患における遺伝子治療の実情について教えて下さい。奈良県立医科大学・新熊 悟先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    藤本 篤 新潟大学医歯学総合病院皮膚科講師


    【回答】

    【表皮水疱症やネザートン症候群,悪性黒色腫に対して遺伝子治療が行われている】

    近年,分子生物学の飛躍的な進歩により,遺伝子治療は先天性疾患に限らず,悪性腫瘍を含む後天的な疾患に対しても治療の選択肢のひとつとして考えられるようになりました。1990年代にアデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase:ADA)欠損の重症複合免疫不全症患者に対して,患者由来Tリンパ球に正常なADA遺伝子を導入して,体内に戻すという世界で初めての遺伝子治療が行われました。その後,アデノウイルスベクターを用いたオルニチントランスカルバミラーゼ(ornithine transcarbamylase:OTC)欠損症に対する遺伝子治療の際に起きた死亡事故や造血幹細胞遺伝子治療を施したX連鎖重症複合免疫不全症患者が白血病を発症するなどの有害事象が報告されました。これらの有害事象が報告されてから,臨床研究はしばらく停滞していましたが,遺伝子治療の実現へ向けた安全性の向上や高効率な遺伝子導入のためのベクター改変など,遺伝子改変技術の改良が進められました。その結果,現在,様々な疾患に対して遺伝子治療が行われるようになりました。

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