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肥満症(小児)[私の治療]

No.5039 (2020年11月21日発行) P.48

杉原茂孝 (東京女子医科大学東医療センター小児科前教授)

登録日: 2020-11-24

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  • 肥満とは,脂肪組織の過剰な蓄積と定義される。わが国の小児領域では,乳幼児・学童の膨大な身長・体重のデータが蓄積されているため,性別・年齢別・身長別標準体重や性別・身長別標準体重が算出されている1)。その標準体重を用いて計算される肥満度が,肥満の判定に用いられている。肥満度=(実測体重-標準体重)/標準体重×100%で計算される。肥満度が+20%以上,かつ有意に体脂肪率が増加した状態を肥満と定義し,肥満に起因ないし関連する健康障害(医学的異常)を合併するか,その合併が予測される場合で,医学的に肥満を軽減する必要がある状態を肥満症といい,疾患単位として取り扱う。適用年齢は,6~18歳未満となっている1)

    ▶診断のポイント

    「小児肥満症診療ガイドライン2017」では,診断項目として以下の項目を挙げている1)

    A項目:肥満治療を必要とする医学的異常として,①高血圧,②睡眠時無呼吸症候群など換気障害,③2型糖尿病・耐糖能障害,④内臓脂肪型肥満,⑤早期動脈硬化。これらが1つ以上あれば肥満症である。

    B項目:肥満と関連が深い代謝疾患として,①非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAF LD),②高インスリン血症かつ/または黒色表皮症,③高総コレステロール(TC)血症かつ/または高non HDL-C血症,④高トリグリセリド(TG)血症かつ/または低HDL-C血症,⑤高尿酸血症。肥満度+50%以上の高度肥満でB項目の1つ以上を満たすものや,肥満度が+50%未満でB項目を2つ以上有するものは,肥満症と判定される。

    また,参考項目:身体的因子や生活面の問題として,①皮膚線条などの皮膚所見,②肥満に起因する運動器機能障害,③月経異常,④肥満に起因する不登校,いじめ等,⑤低出生体重児または高出生体重児,があり,参考項目は2つ以上あればB項目1つと同等とする。

    ウエスト周囲長やウエスト身長比は内臓脂肪蓄積の指標であり,有用である。思春期は肥満症発症のリスクが高まる時期であり,小児の成長発達段階の評価も重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    小児肥満症の治療目標は,体重を減らすことではなく,内臓脂肪を減少させて肥満に伴う合併症の数や程度を減少させることである。患児と保護者にこのことをまず理解してもらう。定期的(1~2カ月ごと)に,体格や肥満合併症の再評価を行う。治療の判定には,肥満度・ウエスト周囲長と身長・体重の成長曲線が有用である。食事療法単独よりも,食事療法に運動療法の併用や行動療法の応用のほうが成績は良好である1)。高血圧,2型糖尿病,脂質異常症などを伴う場合には,それぞれ薬物療法を行うが,肥満の治療薬としては現在,小児では推奨できる薬はない。

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